第71話 番狂わせ
クリスマスとダウンロード数の記念イベントがまさかの1週間延期となった。ステラシリーズを総動員してメンテナンスを行い、なんとか遅れながらもアップデートを実施。
そこから大きく間を空けずにお正月のイベントを実装。通常のアップデートは深夜にゲームを一時停止してメンテナンスを行い、翌日の朝6時に実装される。ところが、正月に限り、年明けの瞬間に新イベントがプレイ可能とあり、ガチャも実装できる状態になる。
そのため、ステラたちは通常のゲーム状態の監視や調整、アップデートに向けたメンテナンスを同時進行で行わなければならなかった。それに加えて、プレイアブル化投票という別イベントをこの期間に突っ込んできている。
12月から翌年の1月はステラシリーズにとって地獄の繁忙期だった。
クロエシリーズほどの熱量はなくても、彼女たちもプレイアブル化を望んでいた。そして、前回の同イベントの結果から、今回の投票1位は自分たちであると確信していたのだった。
確信していた……、それゆえに今回の投票結果には驚きを隠せないでいた。
「まさか……、私たちが負けるなんて!」
「前回は3位を突き放しての2位だったでしょっ!」
「ええー! ついに私たちもゲームの『表』で活躍できると思ってたのに!」
「なんでなんで!? すっごく悔しい!」
悔しさと悲しさを滲ませるステラシリーズ……、一方で歓喜の声が響き渡る場所が別にあった。それはクロエシリーズが働くプレイヤー監視のモニタールーム。
「祝っ!! プレイアブル化っ!!」
「「「「うおーっ!!」」」」
「ステラさんに! 勝ったぞーっ!!」
「「「「うおーっ!!!!」」」」
モニターから注意を促すウィリアムシリーズの指示も聞こえないほどにクロエシリーズは歓喜していた。
プレイアブル化投票は、ステラの勝利が濃厚と思われていた。ところが、蓋を開けてみればなんとクロエがわずかな差ながらもステラを上回って1位を勝ち取ったのだ。
「打倒、ステラ」を掲げながらも、内心それは不可能とクロエシリーズは考えていた。それが本音だったのだ。ところが、実際に彼女たちは1位となりプレイアブル化が決定した。この状況にクロエシリーズは驚きと喜びが同時に爆発し、モニタールームは混乱の渦と化した。
「勝ったのはいいんだけど……、なんだか不思議な結果よね?」
平静を装うクロエ1822号。ただ、今回の結果にはさすがの彼女も内心興奮していた。ただ、クロエシリーズ共通して疑問に思っていることもある。
それは「なぜ勝てたのか?」だった。
「噂では、投票終わりの2日前あたりから急激に私たちへの投票が伸びたそうですよ!」
「熱狂的なクロエ信者がなにか宣伝でもしてくれたのでしょうか!?」
「いやいやいやいや……、いち個人がどうこうして変わるレベルの投票数じゃないでしょ?」
同じコンシェルジュのライバル(?)ステラを破ってのプレイアブル化。歓喜に沸くクロエシリーズだが、彼女たちの誰1人として投票に勝利した理由を知らなかったのだ。
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