第三章:ピースブレイカー

アータヴァカ/関口 陽(ひなた) (1)

「あれ? ここは?」

 救急車か、ここは?

 意識を取り戻して、まず思ったのが、それだった。

『医療チームの車です。現場に居たメンバーの大半が意識を失なうか、戦闘継続困難になったので回収しました』

 後方支援チームから無線通信。

「あたし、どれ位、気絶してた?」

「一〇分少々ですね」

 医療チームのスタッフが答える。

「結局、逃げられたの?」

『ええ……「早太郎」と……安徳グループの狼男だけが意識を失なわずに済みましたが……でも、あの「鬼」と女性が逃げる隙は出来てしまいました』

「あいつら……化物だな……」

『ところで……あ……「ニルリティ」の方がトラブってるんで……』

 音声通話だけで状況を推測するしかないが……何か、すげ〜事が起きてる……ら……し……。

『おい、何て真似してくれた? あの馬鹿が怒り狂うぞ』

『あのな。こうしないと、お前、自分の体で衝突の衝撃を減らすつもりだったろッ‼』

「おい、『あの馬鹿』って、あたしの事か? 何が起きた?」

『大した事じゃない。ちょっと帰りが遅れるだけだ』

「待て、あたしのバイク、どうなった?」

『壊した』

「ふざけんな、ボケッ‼」

「元気な病人ですね……」

 医療チームのスタッフは……呆れたように、そう言った。

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