ニルリティ/高木 瀾(らん) (6)

 私が狼男のパンチを躱した瞬間、大型の金属の腕が、狼男の腕を掴んだ。

 レンジャー隊のパワー型イエローの背中に装備されている機械腕だ。

 一般的な回転式電磁モーターで駆動し、護国軍鬼や水城みずきのような人工筋肉式に比べ、精密動作や反応速度で劣るが、パワーでは勝る。

 だが……。

「え? 何でだ?」

 機械腕が取り付けられているレンジャー隊の副指揮官ブルーパワー型イエローのハイブリッド型は体ごと宙に浮く。

 機械腕を狼男の手から離すが……既に狼男は機械腕を握り返していた。

 これでは……狼男にパワーで勝っていても、そのパワーを巧く活用出来ない。

 私は軍刀から手を離し、たまたま、そばに転がっていた機動隊員の盾を手にし、狼男との間合を詰める。

 ゴオッ……‼

 盾を防具ではなく、武器として横方向に振り回すが、狼男には避けられ……。

 だが、その時、狼男は機械腕から手を離してしまい……。

 ゴオッ……‼

 もう1つの盾が狼男の脳天に撃ち込まれ……。

「中々いいね、これ……ん?」

 そう言ったのは、レンジャー隊の副指揮官ブルーパワー型イエローだが……。

「って、そんなの有りかよッ?」

 その盾は、狼男の頭に当ってなどいなかった。

 それどころか、私がさっきまで使っていた軍刀で両断されていた。

「あんな物騒な刀、敵にくれてやるか、フツ〜?」

「うっかりしてた。量産品なんでな」

「残念だったな。仲良く死ね」

 狼男は軍刀を振り降し……。

 私は、左腕の隠しブレードを展開、狼男の刃に側面から当て軌道を逸らす。

「打撃も駄目、斬撃も駄目、絞め技も駄目なら……残る手は……」

 私は鎧の余剰エネルギー排出口を全開にして、横斜め前に高速移動。

 続いて、足の隠しピケットをアスファルトに撃ち込み方向転換。

「関節技か……」

「あっ?」

 狼男の背後に回り込んだ私は狼男を足で胴絞め。

 背後から狼男の口に両手を無理矢理入れ……。

「おい、手伝え」

「それ、関節技って呼ばねえよ」

「あががががが……」

 ツッコミと共に、機械腕が狼男の口に侵入した。

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