第41話 対ロシア・スエーデン対策

 さて、プロイセン本国の戦闘で勝利をめ、ベルリンも陥落させたもののプロイセンの王フリードリヒ・ヴィルヘルム3世は旧ポーランドである東プロイセンのケーニヒスベルクに逃亡してしまった。


 結果として言えばロシアはプロイセンに対し援軍を出す事を決めたため、現状では逃亡したプロイセンとの戦闘の継続及びロシアの援軍との戦闘は回避できない。


「ふむ、あまりロシアとやり合いたくはないのだがな」


 ロシアに位置する国家と戦い勝利したのは古の大蒙古帝国くらいであって、ポーランド王であったヴワディスワフ4世は1610年にポーランド軍を率いてモスクワを陥落させ入城しているが結局その地にとどまることはできなかった。


 そして、ナポレオンはスエーデンのカール12世をよく研究していた。


 スエーデンの最盛期においてスエーデンのカール12世とロシアのピョートル1世を中心とした北方同盟の間で行われた大北方戦争において1707年から1709年に行われたカール12世のロシア遠征での敗北の過ちを繰り返すつもりはなかったようだ。


 カール12世によるロシア遠征においてはロシア側の焦土戦術によってモスクワを陥落させる事はできず、スエーデン軍は甚大な被害を出して、結果としてスエーデンはその敗北によりその後大国の地位から転落することになった。


 カール12世は戦術の天才であり東ヨーロッパのほとんどすべてを敵に回しながらも度々戦場では敵を打ち破った、そういう意味でもナポレオン・ボナパルトの先駆者であった。


 しかし、外交政策の失敗を取り戻すことはできなかったという点でも間違いなく彼はナポレオンの先駆者であったろう。


 逆に七年戦争で敗北の縁に何度も立ちながらも外交でなんとか乗り切ったプロイセンのフリードリヒ大王を見習うべきでは有ったのだろうな。


 ロシアと本気でやり合うならばポーランドやリトアニアを独立させフィンランドをスエーデンに戻し、ロシアの南西の主要な穀物生産拠点とサンクトペテルブルクをスエーデンかポーランドに占領させ、ポーランド人やスエーデン人のロシアからの解放という名目でロシアと戦力を分離させ、ロシアの力を削ぐしか無いだろう。


 ではなぜナポレオンはロシアに短期決戦を挑んだのかと言えばアウステルリッツなどの勝利によって挑発すればすぐにおびき出せると侮っていたことも有ったし、スペインの統治に失敗して西部で敗北が決定的になったからでも有った。


 ロシアを一撃で突き崩し講和を結ぶことでしか、状況を変えられぬと考えていたのであろう。


 結果としてナポレオンはカール12世と同じ過ちをおかし、没落の一途をたどるわけであるが。


 そして、スエーデンは1788年から1790年の間、ロシア・スウェーデン戦争を行っておりこの時ロシアのバルチック艦隊は大敗北を喫し、およそ150隻の軍艦のうち50隻が撃沈ないし破壊されるという被害が出ている。


 もっとも、この海戦のスエーデンの勝利には、イギリス海軍より出向したシドニー・スミスなどのイギリス海軍軍人の働きも大きかったようではあるが。


 もっとも、その後フランス革命により、革命の波及を恐れ王政の維持のために両国の関係は急速に改善され、1791年にスエーデンとロシアとは軍事同盟を締結し共闘している。


 もっともその時の指導者であるグスタフ3世は1792年3月16日に暗殺されているのであるが。


 その後を継いだグスタフ4世は基本的には反フランスを継承しつつも、直接的にはフランスとは敵対しない中立の方針を取っていた。


「スエーデンと同盟を結びロシアと縁を切って

 こちらにつくのであればスエーデンにはかってのバルト帝国の領土を割譲して良いとすればこちら側についてはくれぬかな?」


 わたしはタレーランにそう聞いてみた。


「ふむ、無駄に敵を増やすよりは良いと思われますな。

 王政からの解放者である我々と手を結ぶことを感情的に反対せぬような者であれば可能でございましょう」


「では、タレーラン、君に交渉を頼めるだろうか」


「分かりました」


 タレーランが有能な外交官であることは間違いない。


 あとは彼の弁舌に期待しよう。


 史実ではロシアにスエーデンを攻めさせることで、フランスはスエーデンを衛星国としたが、フィンランドの割譲によりロシアの領土は広くなってしまった。


 ならばむしろスエーデンを支援して、ロシアと対抗させたほうが良いとは思うが、果たしてスエーデン王は己の感情ではなく国の利益のためにロシアと縁を切りフランスと手を結ぶだろうか。

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