リアルにリア充爆発した~おモテにならない男子たちのやりすぎ儀式~

日夜 棲家

序章:「リア充爆発しろ」と『悲恋の黒魔術』

第1話 5月12日(金)の放課後~部室棟四階空き教室にて~

 むかーし、昔……というわけではなく、時は現代。


「愛してるよ、ハニー♡」


 あるところに……正確に言うと高校の文化部部室棟四階の空き教室で。


「私もよ、ダーリン♡」


 おじいさんとおばあさん……じゃなくて、それはそれはおモテにならない男子生徒諸君が集っていました。


「ん~、ちゅっ♡」


 うっざ。……ごほんっ。



 只今、その棟の裏側ではカップルたちが絶賛愛を育み中。そんな光景を六人の男子生徒が四階の教室の窓から眺めています。


「……くそぉっ! 何故だ!? 何故、自分には彼女ができない……っ! 研鑽は重ねているというのに……っ!」


 一番左側の窓のところにいて、両方の拳をサッシに叩きつけて悔しさを露わにしているのはサトウ・ハルトくん。いろんな自分を見てもらいたいという理由で髪型をアシンメトリーにしている男の子です。


「……そういうとこなんじゃないの? 『自分がモテないのはお前ら女子たちが悪い!』ってとこ直した方がいいよ、サトウくん。まあ、怒りたくなるのはわからないでもないけどさ。あいつら、他人の目も気にせずにイチャイチャするから鬱陶しいんだよね。ウチらのこと、なんも考えてないし。明日滅びないかな?」


 サトウくんの一つ右の窓のサッシに両方の腕を乗せてその組んだ位置に顎を置き、眼下のカップルを見下すようにしているのはスズキ・アオトくん。小柄で子どもっぽい男の子です。


「てか、おめぇら聞いたかよ!? 一組のコバヤシ! あいつ、最近ここに来ねぇな、と思ったら抜け駆けしてやがったんだ! しかもお相手はあのイチジクさん、とかふざけんじゃんぇぞ! なんであんなモブ中のモブがクラスどころか学年のアイドルのイチジクさんと……っ! くそっ、もうイチジクでヌけねぇ……っ!」


 スズキくんと同じ窓のところにいて、窓ガラスが割れそうなほどの力で握りしめているのはタカハシ・リクくん。巨漢で鬼のような形相をしているためデフォルトで怖がられている男の子です。


「先週の土曜日、悪漢に襲われてるイチジクさんをコバヤシくんが助けたらしいよ? 助けたって言えるほどカッコイイ形じゃなかったみたいだけど。そういえば今週コバヤシくんを見てないね、ってクラスの子と話してたら、そんな噂があるよ、って教えてくれた。コバヤシくんが頑張って掴んだチャンスならオレとしては応援してあげたいな、とは思うんだけど。その、付き合えたって報告してくれなかったのは残念だけどね……」


 スズキくんとタカハシくんがいる窓から柱を挟んで更に右の窓のところにいて、苦笑を浮かべながら頬を掻いているのはイトウ・ハルキくん。どうしてこんなところにいるのかわからないほど爽やかでイケメンな男の子です。


「ええっ!? そ、そうなんだぁ。くっちゃ、くっちゃ……。ぼく、知らなかったよぉ。コバヤシくんとエマちゃんが付き合ってたなんて……。ひ、ひどいね、コバヤシくん! 仲間だと思ってたのにぃ……。くっちゃ、くっちゃ」


 イトウくんと同じ窓のところにいて、大きな菓子パンにかぶり付きながらその屑を外にぼろぼろと零しているのはワタナベ・ユイトくん。坊ちゃん刈りのぽっちゃりさん(?)な男の子です。


「フン! あいつなんてもう仲間でもなんでもねぇやい! 付き合えたのに黙ってたとかとんだ裏切り行為じゃん! つうか、問題はイチジクさんが彼氏持ちになったことの方だよ! ああ! 我らのイチジクさんがぁ……! うぬぬぬぬっ、コバヤシィいいいいっ! 今度会ったらただじゃおかん!」


 イトウくんとワタナベくんの一つ右、一番右側の窓のところにいて、窓枠を掴みながら悔しそうに地団太を踏んでいるのはヤマモト・ハルくん。ちょっと、いいえ、大分エッチなお猿さんのような顔をしている男の子です。


 彼らはとっても、とおーってもナカヨシ。

 それは、ある一つの共通点が彼らを結束させているからでした。



――彼女いない歴イコール年齢――



 この共通点が彼らを強く、強く結びつけていたのです。



 さて、実はこの教室にはもう一人、ずっと彼女ができたことのない男の子が集められていたのですが、彼だけは他のみんなとは少し毛色が異なっていました。

 その男の子は窓に寄っていってカップルを見下ろすことなく、背面黒板の前に備え付けられた背の低いロッカーの上に仰向けになって両方の膝を合わせて立てながらスマホを弄っているタナカ・ミナトくん。ゆるふわ系で眠たそうな子猫のように可愛らしい性別詐称的な男の子です。制服が学ランなので男の子だと判断できますが、それがなかったら、判別はほぼ不可能と言っていいでしょう。タナカくんは女の子が羨むほどの容姿をしていました。そのため、他の人たちほど恋人をつくる云々の話に熱心になれなかったのです。

 そんなタナカくんがこのメンバーに組み込まれてしまったのは一年生の時に「彼女がいたことがあるか」と聞かれて正直に「いたことがない」と答えてしまったからでした。


「……」


 タナカくんは一瞬、窓側に寄っていた彼らを見遣りましたが、すぐにスマホの画面へと視線を戻しました。



「さあ、いこうか。早くハニーの手料理が食べたいな♡」

「もうっ、ダーリンったら♡」


 カップルたちは彼女さんの手料理を食べるために帰っていくようです。それを見送った六人は口々に悔しさを滲み出しました。


「くそぉっ! 散々見せつけおってからに!」

「……こっちが勝手に覗いてるだけだよ。それでダメージ受けてるんだから世話ないね。でも、見てもつらいだけなのに、なんであんなに気になるんだろうね? 引き付けられるっていうか……」

「……コバヤシもあんなことやってんのか? イチジクさんと……。 くっそ! 羨ましい! 羨ましくなんかねぇけどな!」

「速攻で矛盾してるよ、タカハシリクくん……。でも、まあ、彼女ができたらどんな気持ちになるんだろうね?」

「くっちゃ、くっちゃ……。彼女ほしい……。彼女ほしいなぁ……。くっちゃ、くっちゃ……」

「……つうか、思ったんだけどさぁ――」


 彼らが自分たちの境遇を嘆いて空気がすこぶる重くなるなか、ヤマモトくんが何かを思い出して言いました。


サトウハルト! お前はいいよなぁ!? 可愛い、可愛い妹がいるんだもんな!? 去年の学園祭の時に知ったけど、あんな子と一つ屋根の下だなんて……! かぁー! 羨ましい! なあ、紹介してくれよー!」


 おモテにならない彼らですが、個々人それぞれが「女性との接点が何もない」というわけではないようです。……まあ、「家族は女性に含まれない」という考えは通例かもしれませんが。


「あんなのでよければいくらでもくれてやる。ただ、付き合うなら覚悟しておけ。あいつは金を融かす。将来のためにと高校に入ってからバイトを始めたが、あいつの所為で一向に溜まらん。むしろ赤字だ。その覚悟があるなら……いや、頼む。誰か、その覚悟を持ってくれ。そして、あいつをもらってくれ。自分を解放してくれ……っ」


 サトウくんには妹さんがいました。ただ、その妹さんはお金を湯水のように使ってなくしてしまう金遣いの荒い子だったようです。そして、お金が必要な時にだけ兄であるサトウくんに甘えて頼る性格をしているそうです。サトウくんは切実でした。


「……というか、あんなのを紹介してくれと頼むくらいなら、イトウに頼んだ方がいいのではないか? イトウ、貴様には確か姉がいただろう? 貴様に似て美人だったと記憶している。自分のとこより余程仲が良いようだし、頼めば連れてくるくらいはできるのではないか?」


 今度はサトウくんがイトウくんに投げかけます。


「……い、いや。良くなんて、ないよ。あれは姉さんが一方的にオレに付き纏ってるだけなんだ。トイレにも風呂にも寝室にもついてきてさ……! 今もきっと、どこかでオレのことを監視してるに違いないんだ……っ! こ、心が休まらない! こ、このままじゃ、オレは壊れちゃうよっ! ね、ねえ! オレが姉さんを紹介したら、誰か姉さんを引き取ってくれるのかな!? それを保証してくれるのかなっ!?」


 イトウくんにはお姉さんがいました。ただ、そのお姉さんの話題になっただけでイトウくんは蒼白い顔になってがくがくと身体を震わせました。イトウくんにそうさせてしまうほどに彼のお姉さんは度の越えたブラコンだったようです。イトウくんはサトウくんよりも切実でした。


「……そ、そうか。なんか、済まなかった……」


 話をイトウくんに投げたサトウくんが責任を感じて何も言えなくなるなか、ヤマモトくんは違った反応を示しました。


イトウハルキ、お前贅沢なんじゃねぇの? 俺っちはそこまで愛されたことねぇからさ、体験できるなら体験してみてぇんだけど?」


 イトウくんの気も知らないでそんなことを言うヤマモトくんに、イトウくんは笑って返しました。但し、目はちっとも笑っていません。光を失ってさえいました。


「ヤマモトくん。愛はね、重いと人が死ぬんだよ。主に愛された側の心が」


 イトウくんの言葉に、その場は静まり返りました。その沈黙を破ったのは、こっそりと聞き耳を立てていたタナカくんの呟きでした。


「……い、イトウの姉、ヤンデレのブラコン……?」


 タナカくんはあまり声を張る方ではありませんが、静かになっていたのでその声はみんなの耳に届きました。

 タナカくんはイトウくんのお姉さんのことを知らず、聞いた内容を想像していました。ただ、それだけで震えが止まらなくなりました。やりましたね、イトウくん! タナカくんは気持ちをわかってくれましたよ!


「あ! ご、ごめんね、タナカさん! 君を怖がらせるつもりじゃなかったんだ! えっと、えーっと……そうだ!」


 ……謎にさん付け。そのことについては一旦おいておきましょう。

 イトウくんはタナカくんに配慮して話題の転換を図りました。


「そ、そういえば! オレなんかよりよっぽどラブコメしてる人がこの中にいるよね!? タカハシリクくん! 義理の妹ができたんでしょ!? フカボリさんとはどうなの!?」

「っ! イトウハルキ、テメェ……っ!」


 イトウくんはどうすれば自分の話題から逸れるのか必死に考えて、タカハシくんから相談を受けていたことを思い出し、彼に水を向けました。突然そんなことをされたタカハシくんはイトウくんを睨みつけました。


「は、はぁああああ!? ふ、フカボリって、あのフカボリ・メイさんか!? うちの学校でイチジクさんと人気を二分している、あの!? 俺っち、知らなかったんだけど!? くっそぉ! リア充がぁ! 死ねや!」


 イトウくんの狙い通り、この話にヤマモトくんが食いつきました。タカハシくんはこの話題を広げたくなくて舌打ちをしました。けれど、美少女の話になるとヤマモトくんがしつこいのをタカハシくんも知っています。ですので、タカハシくんは諦めて明かすことにしました。


「別に。今年に入って親父が再婚するってことになって、その継母の連れ子が同級生のフカボリだったってだけだ。俺様も最初は『フカボリと暮らせる!』って舞い上がったが、そんなモン、すぐに打ち砕かれた。あいつ、俺様とは話をしねぇし、顔すら合わせようとしねぇ。継母かあさんから伝言を頼まれた時だけは渋々対応するが、その時でもゴミムシを見るみてぇに見てきやがる。そんな目で見られるって知ってたら、一緒に住むの反対してたわ、まったく……」

「……お、おっふ……」


 ヤマモトくんが突っかかってきましたが、タカハシくんはそれを一蹴します。タカハシくんと一緒に住んでいる義妹のフカボリさんとは険悪な関係だったようです。またみんな何も言えなくなってしまいました。


 本日、何度目かになる沈んだ空気を、タカハシくんは咳払いをして切り替えます。


「……ごほんっ。っていうか、さっきから思ってたんだが、ヤマモト……。テメェ、幼馴染がいるだろうが。余所様の芝生を見るより、自分テメェん家の芝生を見た方がいいんじゃねぇの?」

「は、はあ!? そ、それってシメのことか!? な、ないない! だって、俺っちに言うこと聞かせようとしてくるんだぜ、あいつ! 態度も高圧的だしさ! ガキ大将かっての! 幼馴染っていうなら、もっと清楚で可愛げがあって『ちゃん付け』で呼んでくれなきゃ! それにあいつ! おっぱいちっさいしさ……!」


 タカハシくんはヤマモトくんを話のターゲットに据えようとします。ヤマモトくんが乗ってきたのでそれは成功しました。

 ちなみに、ヤマモトくんは女の子を胸で評価する最低クソ野郎でした。


「そう? 君は近くにいすぎてわからなくなってるだけだと思うよ? シメさん、明るくて気が利くから結構人気があるんだよ? 狙ってる人も多いって聞くし……。それに可愛いでしょ? あの子」

「フン! お前らは外面しか知らねぇからそんなことが言えるんだよ! 身近にいてみろ! 本性、暴君だぞ、あれ!」


 ヤマモトくんは幼馴染であるシメさんのことを快く思っていませんでした。ヤマモトくんはシメさんを「自分のことを押さえつけようとしてくる煩い存在」と認識しているようです。


「折角、幼馴染がいるっていうのにあれじゃあなぁ! 期待外れでがっかりだよ! そういや、いい思いしてるって言ったら、俺っちよりスズキアオトだろ!? お前、ヤマナシと仲良いじゃん! いいよなぁ、アイツ! おっぱいおっきいし! バインバインじゃん!」


 ヤマモトくんはシメさんの話をしたくなくて、スズキくんにキラーパスを送ります。


「……は? 何言ってるの? ヤマナシ、すっごい怖いんだけど? みんな知ってるよね? あいつがギャルのヤンキーだってこと。そのヤマナシと同じように怖いヤツらがウチ占領してるんだけど? これを『いいじゃん』って言うんなら、ヤマナシにヤマモトくんが悪口言ってたって嘘の情報リークしてくるよ。そしたら、ふふふっ。夢のような時間がやってくるかもね? もう二度と起きられないかもしれないけど」

「す、すみませんでしたああああああああっ!」


 スズキくんにキラーパスを送ったつもりのヤマモトくんでしたが、見事に地雷を踏み抜きました。


 スズキくんには確かにヤマナシさんという女の子がついて回っていましたが、彼女の素行は決して良いと言えるものではなかったのです。スズキくんはヤマナシさん御一行に家を占拠されているようで、ストレスを溜め込んでいました。

 話を振る相手を完全にミスってしまったヤマモトくんはスズキくんに対して平謝りするしかありません。おっぱいに目が眩んだ罰ですね。


「はぁ……。なんであんなのに絡まれるんだよ、ウチは……。どうせなら全てを包み込んでくれるような優しい人に家に来てもらいたい……。そう! コハルさんみたいな……!」

「くっちゃ、くっちゃ……げふう! ……え? ママ?」


 スズキくんが口にしたコハルさんとは、ワタナベ・コハルさん。ワタナベ・ユイトくんのお母さんです。スズキくんはワタナベくんのお母さんに恋焦がれていました。


「……相変わらずだなスズキ。人妻を好むとは……」

「ま、まあ、コハルさんはお姉さんにしか見えないからね。わからなくはないかも」

「だよなぁ。俺っちの母ちゃんもコハルさんくらい若くて美人だったらなぁ……。こんなとこに来てないでまっすぐ帰ってるんだけどな」

「ううむ……。ワタナベユイト、テメェ本当にコハルさんと血が繋がってるのか疑いたくなるんだが……」

「くっちゃ、くっちゃ……。ん? ママはママだよぉ? 可愛いよねぇ?」


 ワタナベくんのお母さんであるコハルさんは若々しくて綺麗で、彼らに大人気でした。ワタナベくんもお母さんを褒められてご満悦です。ご機嫌で本日十袋目を開けて中身を口へと運ぶのでした。


 喜んだことでドーパミンが出たようで、ワタナベくんがふとあることに気づきます。


「あー! 良いこと思いついたー! みんなで紹介し合えばいいんだよぉ! どうもみんな、近くにきれいな人がいるみたいだしー! そうすればぁ、誰かはお付き合いできるかもしれないよねぇっ!」


 サトウくんにはツムギさんがいて、

 イトウくんにはお姉ヒマリさんがいて、

 タカハシくんには義妹のフカボリ・メイさんがいて、

 ヤマモトくんには幼馴染のシメ・サナさんがいて、

 スズキくんにはつるんでくるヤマナシ・ミオさんがいて、

 ワタナベくんにはお母コハルさんがいる。


 なんということでしょう。それぞれが女の子と関わっていたではありませんか。

 紹介することができれば、それはそれはおモテにならない男子たちの集いから卒業できるかもしれなかったのです。まあ、紹介することができたとしてもカップルが成立するかどうかは別問題ですが。そもそも、「みんなの前に連れてくることができるのか」という最初にして最大の難関があることを彼らは気づいていませんでした。


「おお! それだ! それだけいれば誰かはカップルになれるかもしれないな!」

「うんうん。姉さんに恋人ができれば、少しは弟離れしてくれるかな」

「よっしゃあ! そうと決まれば早速日程立てるべ! 未来の彼女が待っている!」

「おい、テメェら! 絶対連れて来いよ!? やっぱやめたとかナシだからな!?」

「ああ……! コハルさんと、コハルさんとついにお近づきになれる……!」

「くっちゃ、くっちゃ。ぷぷぷ。楽しくなってきたねぇ」


 彼らは盛り上がっていました。まだ彼女ができると決まったわけでもないのに。


 それはそうと、この中で一人だけ場の空気に乗れていない人が一人いました。


「……」


 タナカくんです。彼だけは周りに紹介できる子がいなかったからです。


 タナカくんは幼稚園で女の子に揶揄われたことをきっかけに、小・中は男子校に通っていました。極めつきは父子家庭であり、父親と二人暮らしであるということ。タナカくんには女の子との繋がりが一切ありませんでした。


 タナカくんがボーッと他の六人のことを眺めていると、ワタナベくんがそれに気づいて聞いてきます。


「あ、ねえねえ。タナカくんは紹介できる子いるぅ?」

「……」


 正直にふるふると首を横に振って返したタナカくん。すると、他の五人が――


「悪いな、タナカ! 貴様が女の子を紹介できないというなら一人溢れてしまうからな。これには参加させられない。……まあ、貴様なら向こう側で参加するという手もなくは――ゲフンゲフン」

「……え? タナカさんは向こうで――」

「わりぃな! 俺っちたちだけで彼女つくってくるわ! まあ、当日になって飛び入り参加できるっていう状態になってたらしてもいいけどなっ! もちろん向こう側でっ!」

「許してね、タナカくん……。ウチらは君がいたから今までやってこれたんだ……! だから、ウチらに本当の彼女ができても、君のことは忘れないよ!」

「おいおい、そんな顔すんなって! 心配しなくたってテメェにはすぐにできるだろうよ! 彼氏が」


――などと宣ってきました。


 別にタナカくんはどうしてもこの「女の子を紹介する会」に参加したかったわけではありませんが、一人だけ仲間外れにされるのはそれはそれで複雑な気分だったのです。彼らのタナカくんを除け者にしようとする意志を感じ取れて、タナカくんは溜息をつきました。そして、「こいつら、本当に同類か?」みたいなことをちょっと思いました。


 タナカくんだけは、絶対に彼女ができるという保証がないことに気づいていましたが、彼はそれを黙っていることにしました。ちょっと、面倒くさくなったので。

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