第2話・女剣士との出会い
すると、一瞬で目の前に広大な森が現れた。
下をみると地面に転移陣が書かれている、きちんと転移できたようだ。
目の前に広がる森にはどんなモンスターがいるのだろう。
ラビット、ゴブリン、ワーム、スライムとかそんな感じかな。
そうだ!とりあえず、攻撃スキルを確認しておかないと。
攻撃スキルは・・・と考えてみると、ファイヤーボルトと思い浮かんだ。
ファイヤーボルトという事は魔法使いか、ステータスとか開けるのかな?すぐにシステム画面が出現し、
職業:魔法使い見習い
LV 1
女神の加護
「情報こんだけっ!」
と突っ込みをいれつつ、試しに攻撃スキルを放ってみる。
「ファイヤーボルト!」
と言うと、手から小さな火が飛んでいった。
飛距離は体感的にそこそこといった感じか。ただ、最初から手にしているスキルは間違いなく低火力だろうから、逃げて、打って、逃げて、打ってを繰り返すヒット&アウェイが重要になるだろう。
よし、モンスターがいればこの作戦でいこう。
森は、人が歩きそうな場所に木や草が生えていない親切設計だ。
普通の森なら木や草だらけで歩くのも一苦労だろうし、さすがゲームという感じだな。
森の中を歩きつつ、薬草はどれだろうなと生えている草を近づいてじーっと眺めてみる。そうすると赤草とテロップが現れる。
こういうことか、薬草なら薬草と表示されるのだろう。モンスターの襲撃を警戒するために、辺りを見渡しながら薬草を探す。
「やっとみつけた!」
1時間くらい経過しただろうか、ようやく薬草とテロップが書かれた草を見つけた。草の種類が多すぎて、一つ一つ確認してたらこんなことに・・・薬草探しってめちゃめちゃしんどいクエストじゃないか?
まじまじと見つめ、薬草の姿をしっかりと覚えてポーチにしまう。
薬草の現物を協会の受付嬢に見せてもらえば、見た目が全く違う草を眺めなくても済んだのにと後悔していると、前方から身長130cmぐらいの犬の顔をした、2足歩行の体に小さな槍をもったモンスターが現れた。
「あれは、コボルトか」
コボルトを意識して見ると名前が表示される、ミニコボルトというようだ。
ミニコボルトはこちらに向かってくる。ただ、足は遅い。
これはチャンスだ、足が遅い敵ならヒット&アウェイで倒せる。
さっそく手をミニコボルトにかざす。
「ファイヤーボルト!」
「グゥッ!」
手から小さな火が飛んでいき、ミニコボルトの胴体に命中した。
命中した部分が少し焦げて黒くなっている。
「グゥルル!」
と吠えて、こちらへ走ってくる。俺は後方へ走って距離をとり、ファイヤーボルトを放つ。
「ファイヤーボルト!」
「グゥッ!グゥルルッ!」
と当てては後方へ走ってを繰り返す。
5回当てたところでミニコボルトは倒れて、光の泡となった。
モンスターは倒すと死体は残らず、光の泡となる仕様らしい。
はぁはぁと息を整える。
今まではディスプレイに映るキャラクターを操りモンスターを倒しまくっていたが、キャラクター自身になってモンスターと戦うのは、めちゃくちゃ緊張した。
それと同時に、初めてモンスターを倒した事にテンションが上がる。
ノーデスするなら、安全に倒せるモンスターを倒して過剰にLVを上げることが最重要だろう。
その後も薬草を探しつつ歩き、3体目のミニコボルト倒した時に体が一瞬発光する。
これはLVが上がった演出じゃないか?ステータスを確認する。
職業:魔法使い見習い
LV2
女神の加護
おお!LV2になったぜ。相変わらず、他のステータスとかは見れないけどLV2になった。
新しい魔法は、なしか・・・
ん、ミニコボルトを倒した場所をよく見てみると、なにか落ちている。
ドロップ品だろうか、銅貨1枚が落ちていた。今の俺にはありがたい。
そんなことを繰り返していると日没だ。
夜は光がほぼないから、狩りはできないな。
今日一日薬草採取をしたことで、遠目でも薬草の判別ができるようになってきたことが大きな進歩だ。
成果は薬草8本、ミニコボルトからのドロップ品は銅貨2枚とボロ切れ1枚だ。ドロップ品は全部ポーチに入ったし、重さは何も入っていないかのようなので、狩りに支障はなさそうだ。
最大容量は確認できていないが、初期装備としては十分だな。
それも!このポーチは物が何個入っているかの確認もできるし、取り出したいと思えば好きなものを取り出せるようになっている。こういうポーチは必要だよな!
初日の成果に満足した俺は転移陣を使って冒険者協会へ帰還し、受付嬢に報告をする。
「仮登録しているゼロです。クエスト完了の報告にきました」
「はい、ゼロさんですね。薬草をご提出ください」
言われたとおり、今日採取した8本の薬草を納品した。
「ありがとうございました。
クエスト報酬は薬草1本銅貨3枚なので、薬草8本で24枚となりますが、仮登録のお支払いで3枚いただきますので、銅貨21枚のお渡しです。
あ、あと正式な冒険者になるまで、報酬は全て銅貨でお支払いさせていただきます。
これは初心者の方は、銅貨のほうが使いやすいとの判断からの措置となりますのでご了承ください」
おお、感動だ!
はじめてクエストでお金を稼いだ。
このクエストは多分周回クエストだろうし、安全にお金稼ぎとLV上げができるし言うことなしだな。
ぐーっとお腹が鳴った。
よく考えたら、朝からなにも食べてないことに気づいた。
「すみません」
と恥ずかしそうに受付のお姉さんに言うと、
「協会には新人さん支援のために協会宿舎がございます。
そちらはLV20まで使用可能になっており、一日銅貨5枚でご使用できます。
朝晩と2食付ですので、もしよろしければご利用ください」
ニッコリと笑顔で案内される、可愛い。
場所は裏手にある建物との事で協会を出て、裏手の建物に入る。
「すみません、ゼロと申します。協会宿舎を利用したいのですが」
カウンターで声をかけると、受付のおばちゃんがでてきた。
「はいよ、一日銅貨5枚になるけど大丈夫かい?」
「はい、大丈夫です。とりあえず3日分を支払いたいのですが」
「はいよ、部屋は2階の大部屋で利用者が一人いるから仲良くね。
問題を起こすと、非常に重い罪になるからおとなしくすること。
あと保管箱は一人一つ用意してあるから自由に使いな。
ご飯は質素だけど、朝食と夕食を用意してるから食べるなら食堂にきなよ」
「ありがとうございます。お世話になります」
と言い、3日分の銅貨15枚を支払い食堂で晩御飯を食べる。
食事はスープとパンだけだが助かる。正直、武器や防具、ポーションなど、ありとあらゆるものにお金がかかると思うのでご飯にまでお金をかけてる場合じゃない。
「そうだ、水浴びしてきな。
そこの奥に水浴び場があるからね、自由に使っていいよ」
「ありがとうございます!さっぱりしたいと思ってたんですよ」
お風呂がないのかな?水浴びだとしても1日森で狩りをした後だし、汗を流したい。
奥に行き扉を開ける。
「・・・」
「・・・」
一人の女性が裸で立っていた。髪はロングで茶髪、顔立ちは可愛くて綺麗といった感じだ。年齢は18歳ぐらいか。
体つきもモデルさんのような・・・
「キャーーーーーーッ!」
「すみませんでしたっ!!!!!!!」
天国から一気に現実に戻り、速攻で扉を閉めて食堂へ逃げ込む!
「あちゃ~、ごめんね。レイナちゃんが入ってたね、宿舎の利用者が少ないから気にしてなかったよ」
気にしてなかったじゃない!天国だったけども!あの子が唯一の宿舎利用者だろ、嫌われるパターンじゃないかと頭を抱える。
すると、奥から冒険者の服を着て大剣を持った女性が走ってくる。
「イーナさん、その人痴漢です!すぐに取り押さえますので逃げてください!」
やべえー、とりあえず謝らないと・・・
「ああ~レイナちゃんごめんね、その人が新しく宿舎を利用する方で私が水浴びを勧めちゃったのよ」
「え・・・」
「先ほどは本当にすみませんでした!今日から宿舎を利用させていただきます、ゼロと申します」
「・・・」
レイナは何も答えず2階へ上がっていった。
俺も水浴びを終えて2階に上がり大部屋にノックして入ろうと思うのだが、憂鬱だ。
現実ではあんなこと一度も経験したことないし、ラブコメとかだったらこれをきっかけに進展したりするんだろうけど、そういうゲームじゃないしな。
緊張で胃が痛いが、勇気をふり絞ってノックして部屋の扉を開ける。
「レイナさん、改めまして魔法使い見習いのゼロと申します。
しばらくこの宿舎を利用させていただきますので、よろしくお願いします」
「・・・よろしく。
ただし!私に近寄ったら承知しないわよ!
部屋半分が自分の部屋として使用すること、お互いの部屋へは近づかない事、いいわね!」
「はい!分かりました!」
と部屋の半分が自分のスペースだと豪語され、進入禁止を言い渡される始末。これ、MMOなんだよな?ラブコメじゃないよなと苦笑いする。
「・・・」
「・・・」
き、気まずすぎる。なんか睨まれたりもしてるし、喋りかけないと間がもたん!
「レ、レイナさんの職業は剣士なんですよね?大剣使いカッコイイですね。」
「・・・ありがと」
おし!掴みはいいんじゃないか?
「ちなみに、LVはおいくつなんですか?」
「・・・LV8よ」
「う、高い。私はまだLV2でして、先ほど仮ですが冒険者登録をしたばっかなんです」
「・・・そう、私はもう寝るわ」
「あ、おやすみさい」
「おやすみ」
レイナは布団を敷いてすぐに寝てしまう。
寝るのが早すぎないかとビックリしたが、確かに協会宿舎でできることは武器の手入れぐらいしかないもんな。外も真っ暗で今から狩りにいこうとは思えない。
今日を振り返ってみると、濃厚すぎるぐらいの1日だったな。
砂漠で鬱になって、女神に街まで飛ばされて、協会の薬草採取クエにいって、モンスターと戦闘して、レイナに嫌われてと矢継ぎ早に過ぎた一日だった。
そうだ、とりあえずしなくてはならないことが。
「ログアウト」
「管理者権限がないためログアウトできません」
ログアウトできないことにも、なにも感じなくなってきたな。
とりあえず、こちらからはログアウトできないのだろう、こうなったら全力でTRUTHを楽しむ以外に道はない!明日も薬草採取に行って、ミニコボルトを倒そうと考えながら布団に入り眠った。
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