春待ち雪華

忘れられた落ち葉が土に還る。

甲虫の羽は寒風にさらされても艶を失わない。

土を踏めば、柔らかさと固さが共存した、いい音が鳴る。


悴む指先を擦り合わせ、息を吐く。

鼻の頭を紅くして、明け切らない空を見つめる。


「春はまだかな」


君はそう呟くと再び一歩を踏み出した。

2月は末、雪は止んだ。

春光愛しく、迎えるその目に新しく、福寿草の鮮やかな黄色。


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