【完結】絶対神の愛し子 ~色違いで生まれた幼子は愛を知る~

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01.誰でもいいの、僕を嫌わないで

 派手に割れる音がして、僕は頭を抱えて蹲った。怖い、痛い、冷たい。いろいろな感情が渦巻くけど、うまく言葉に出来ない。


「あんたなんて産まなければよかった!」


「目障りだ。失せろ」


 よろよろと立ち上がり、這うように逃げ出す。いつものことだよ。鼻を啜りながら、目から溢れた水を手の甲で擦った。平気、僕は傷ついてなんかない。僕の周りにはたくさんの友達がいる。他の人に見えないけど、温かくて優しい光が心配してくれるの。


 お屋敷の庭から逃げた僕は、日が当たらない裏庭の隅にある小屋に飛び込んだ。ここは僕がいる場所なんだって。外へ出るなと言われていた。でもお腹が空き過ぎて、ご飯が欲しかったの。お水も飲みたいし、明るいお庭の花に誘われて外へ出てしまった。


 きっと今夜もご飯もらえない。


 小屋の片隅でくるりと丸くなった。あちこちで拾った枯れた草に潜り込む。時々虫がいるけど、僕は平気だった。虫はあのお屋敷の人と違って、僕を叩いたり酷いことを言わない。集まってきた光が、僕を温めるように肌に触れた。


 割れた破片が刺さった肩や腕を撫でるように動く。徐々に痛みが消え始めた。


「あり、がと」


 言葉は聞いて覚えた。だからあまり上手じゃない。でも嬉しそうに舞う光を見れば、伝わったのだと分かった。お屋敷の人と違う姿だけど、光は僕の優しいお友達だ。とても大切で、失くしたくない。


 草に包まって両手を伸ばすと、手のひらに下りてきた。潰さないように抱き締めて、僕はその温もりに目を閉じる。濡れた服はいつの間にか乾いていた。不思議なことは、光が全部してくれるの。僕が出来ないことも手伝ってくれた。


「だいすき」


 僕はきっと、あのお屋敷で生まれた。だから「産まなければよかった」と言われたんだと思う。割れたカップを投げた人が、お母さんかな。綺麗な服を着て、髪は柔らかそうなお日様の色だ。目は枯れてない草みたいな色で、肌は白かった。


 隣で僕を追いやった人がお父さん? 勝手に僕がそう思ってるだけ。実際は分からないけど。あの男の人は、僕のお腹を蹴ったりするから近づかないようにしてる。夕方の空の色をした髪と、昼間の空の色の目だった。


 僕は黒い髪なの。目の色はよく分からない。でも窓でキラキラ光るガラスには、光と同じ色の目があった。あれはきっと僕の色だと思う。同じ色じゃないから嫌われちゃったのかな。それとも生まれた後で、あの人達に嫌われることをしたのかも。変なの、もう濡れてないのに寒い。


 にゃー、可愛い声でもう一人のお友達が現れた。小屋の隙間から忍び込んだのは、白と黒と茶色が混じった不思議な模様の毛皮の子。夜は目が光るんだよ。僕をじっと見た後、近づいてきて草と僕の間に潜り込んだ。


 あったかい。それに柔らかくて、気持ちいい。強く抱き締められるのを嫌う子だから、そっと触れた。僕は温かさを感じながら、ようやく目を閉じた。


 誰でもいいの、僕を嫌わないで。この子みたいに僕が触れることを許して。

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