第67話 分岐 -九鬼-

九鬼組は、先の一件で規模縮小されている。

実際には、内部分裂したと言うのが事実である。


「家宅捜索がこないだの事で行われて、運営が上手くいっていない所に、闇金の債務者に強制執行を始めたみたい...あの人達私の事をヤクザにも売ったみたいね」


未桜が淡々と言う。

つまりは、彼女の両親は九鬼組が母体とする闇金でお金を借りていたということになる。


「まあ、これで九鬼組も終わると思うけど」


彼女の指先の動きが目で追えないほどに素早いタイピングをしていた。

その音は、軽快で心地の良いジャズやクラシックを聴くかのようだった。

まあ、言い過ぎかな。


「ああ、これ九鬼組の若頭みたいね」


未桜は、エントランスの監視カメラで一人の男の顔をズームアップしていた。


「尚弥くん、これつけて」


僕は、彼女からマイク付きのヘッドホンを渡された。

同じ物を未桜もつける。

ヘッドホンからは、呼び出し音がしている。

と思ったらすぐに取られる。


「未桜ちゃん、大丈夫?」


母さんの声が聞こえた。


「はい、寸前にところで尚弥くんが帰って来たので未然に外界と隔絶できました」

「そう、ならよかったわ。

私の方で、警察…ウチと関係のあるしっかりした人を向かわせてるわ」

「助かります」

「全く、九鬼組は碌なことをしないわね。

この間、損害賠償でたくさんもらったのに。

あれで済ませておけばよかったのにね。

これで、あそこの財源は底を尽くでしょうね」


ああ、レストランがあそこまで改装できるレベルに取ったんだからそりゃあね。

今回は、マンションの損害賠償だからやばそうだよな。


「そうすると、エントランスを水浸しにしても…」

「え?九鬼組に請求するからいいわよ」

「じゃあ、スプリンクラーを起動します」


母さんと未桜は混ぜたらダメな気がする。

モニターのエントランスの映像に飛沫が散る。

5人ほどいたガラの悪い男たちがずぶ濡れになる。


「未桜ちゃん、そこに来ている奴らの顔と名前はわかる?」

「もちろん、お義母さんのスマホに送りますね」

「助かるわ…あらあら、若頭が出張って来たのね…あ~なるほど、あの人達未桜ちゃんの事を若頭個人に売ったのね」


ぞっとする話だった。

もし、僕が帰ってくるのが遅かったら未桜は…。


「あ、そろそろみたいです」


未桜が、そう言ったのはマンションの外…これは向かいからのカメラかな?

そこに、パトカーが止まったのが見えたからだ。


「折角の修学旅行の日なのにね。新幹線代は私が出すからこの後京都に行きなさいな。20分ほどで私も着くから」


エントランスでは、捕り物劇が繰り広げられていた。

なぜか、警官と一緒に久瀬原さんの姿が見える。

なんでいるんだろう。


「なんで、久瀬原さんが?」

「あら、時雨くんきてるの?

尚弥は、四国で一緒だったらしいわね。

彼、私とお父さんの古くからの友達なのよ」


確かに、前に久瀬原さんからよろしくと言われた気がする。

世間は狭いな。


「時雨くんなら、先月から浜松に転勤してきてるわよ」


浜松にいるのは分かるがこの場にいる理由にならない。

パトカーから出てきた気がするんだけどなぁ。

エントランスは、久瀬原さんが若頭と戦い圧勝していた。

警官も、それぞれ抑えていた。


----------------------

久瀬原さんは、用事で警察署にいる時に話を聞いて付いてきただけ。

非番で、警察署で警官と組手をする予定だった。


今年一年ありがとうございました。

2023年も大晦日となりました。

3月からおキツネさまを書き始めて9ヶ月が経ちました。

2024年もいっぱい書いていきます。

2/7頃から長期休暇に入るのでそこからはたくさん上げていく予定です。

みなさん、良いお年を。

2023年大晦日

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る