学園恋愛SLGの主人公に転生し、欲望のままに生きることにした結果

@y_mizuki

1END 昆虫博士になろう! いかにして私は悪役令嬢とのごたごたをスルーし、好き勝手に虫を追い続けることに成功したのか

「俺は真実の愛に目覚めたのだ。だからアナスタシア、お前との婚約を解消する!」


 はい、主人公に憑依した生物科学の修士課程の大学院生でございます。気が付いた時には助けたおじいさんが実は学園長ということで、入学のシーンからスタートしておりました。デフォルトネームはアルマなので、まあアルマ(仮)としましょう。この名前とも約一年付き合いましたので、もう(仮)を外してアルマでいいかなと自己完結しております。


「殿下、私に何かご不満があったのでしょうか」


 私が聖フィールズ学園で1年間何をやっていたかと申しますと、異世界ではどんな虫がいるのかと考えた結果、時に王子様に声を掛けて、若干好感度を上げて王領の野山で蝶を探し、時に騎士様のご実家で珍しいセミを探し、時にアルバイトも兼ねて巨大ミミズと戦ったりと、フィールドワークに明け暮れておりました。


「何を言う、お前がジュリアに嫌がらせをしていたのを知っているのだぞ」


 私専門が虫なので、そりゃ異世界に行ったら恋愛なんて後回しにして虫探すわ。

 ええ、色目も使わずに虫の話ばっかりする女を珍獣のごとく見る皆さまの暖かいご支援もあり、無事に博物学会に「王国西部におけるバッタの食性の変化と、大量発生に関する一考察」というタイトルのレポートを提出し、補助金をいただけることとなり、蜂蜜ハンターとして蜂と闘いながら蜂蜜とローヤルゼリーを作って美を求める方々(王妃様含む)に差し出す生活にピリオドを打つことができたのです。


「ジュリア? 殿下、その抱き寄せている方はジュリオ様では」


 なんですか、シモーネ伯爵令嬢様。私の提供する商品が貴重なので、できれば取引量は継続していただきたい?

 すでに先輩の騎士様の領地で養蜂が始まっていますので、そちらに期待してください。王都の貴婦人の方々の需要に応えられるほど、今の私は暇ではないのですけど。


「いやジュリアだ。彼女は劣等感に苛まれていた俺の悩みを受け止め、俺もまた彼女の悩みを受け入れることができた」


 本当はもっと美容分野の研究をしてほしいですか。養蜂については果実の受粉を助けますし、果実農家の副業として収入増につながるので、もう少し広めてもいいかもしれませんが、そもそも私の本業は博物学としての虫なので。

 蜜蜂については益虫でありますので、その派生として養蜂の知識を持っているだけで。まあ害虫の殺し方とかもそれなりに詳しいです。虫よけの薬とかそういう類の。え?そういうのはもうちょっと早めに教えて欲しかった。これは庶民の知恵的なところがありまして、その匂い的な問題もありますし。その薬効成分の抽出して、それに花とかハーブの香りを足せば売れるかもしれませんが。


「殿下、わが国では同性愛の結婚は許されません」


 エルシーさん、興味あるの。ご実家も手広いねえ。ああ私それで金稼ぐ気は毛頭ないからやってみればいいと思うよ。まあ失敗しても私は責任を取らないのであしからず。


「真実の愛の前にはそんなことが必要か。私は王としての責務を果たす。ジュリアがそれを支える、それでよいではないか」


 んー、いつもながらこのキッシュはうまい。ただ中身の豚の塩漬けにはちょっと不満が。塩加減とかは特になんだけど、豚がね。もうちょっと脂身が多い豚を作れないかなって。まあ言ってみただけで。え最近豚の調子が良くない?

 それは近親交配が過ぎるからですね。他所の地域からオス豚を連れてきて交配して、その生まれた子豚をまた違う地域の豚とかけ合わせれば、それなりに強いブタになるはず。いやだから私の本業は農業・畜産じゃなくて博物学なんです。


「ところでアルマ嬢。友人と歓談するのは結構なのだがそろそろ、あの三人を仲裁してくれないか。知らぬ仲でもないだろう」


 先輩、好いた惚れたに干渉すると面倒じゃないですか。仲裁したらしたで絶対に恨まれますよ。アナスタシア侯爵令嬢は一見温厚で庶民にも分け隔てなく接しますけど、根に持つとやばいタイプです。絶対忘れません。相手が忘れたころに報復します。ああいうタイプは常に誠実かどうかより、必要な時だけ必要な分だけ付き合うのがいいのです。決して侯爵家の領地が海で、海の虫は専門外だからあんまり興味ないということではないんですよ。


「我が校の庶民の中で一番図々しい君が言うのだからそうなんだろうね。しかし、君ではなくジュリオ、いやジュリア嬢(暫定)に懸想するとは」


 私は恋愛対象外というか、虫食う女はちょっとと言われました。いや、私は日常的に食べているわけではなくて、フィールドワークの都合上食べるだけなのですが。先輩だって遠征演習の際に非常食として食べますでしょう。


「まあそうだけどね。ちなみにおススメの食べ方は」


 油で揚げて、ハーブ塩掛けると大抵のはいけると思いますが、遠征中にそれは無理なので。現実には焼くか煮るかですね。ちなみにセミは樹液だけ吸うので、グロテスクな見た目さえ無視すればおいしいですね。


「うん、その内その辺の知識、まとめて騎士団に提出してくれると、いざというときに喜ばれるかもしれない。で、一応君に聞くけどあれどう思う」


 一緒にサバイバルした経験がある先輩が書けばいいじゃないですか。評価にもつながりますよ。いろいろ便宜を図っていたただいている都合上若干のお手伝いは致しますよ。

 それで彼、いや彼女かな。私は敢えてジュリオと呼びますが、生まれる性間違えましたね。一か月に一度、数日間は体調悪くなるみたいですし、絶対月のものですよ。


「そうなの。じゃあジュリア嬢呼びしてもOKってことアルマ嬢」


 性転換を実現する魔法なんて知りませんし、物理的な手術は我が国のレベルでは不可能です。多重人格ならケアで何とかなるのですが、有り余る女性らしさは血肉から出るものです。何というか頭蓋の中が女性なんですよ。たまたま陰茎が付いて生まれてしまったのをどうにかできる方を少なくとも私は知りませんね。


「その女性の前では言いにくいが刑罰で切り取る処置をすることがあるが、その方法ではいかないのかい」


 男性の前では言いにくいのですが、あの果物より大きなものを生み落とすのです。雑な処理したら裂けて出血死します。というか、産後の死亡原因は、出血多量か、感染症です。やっぱりデメリットの方が大きいのではないかと思います。自己満足をかなえて死ぬ側は結構でしょうが、残された側はいたたまれませんからね。さて己を責めるか、他人を責めるか。


「何だ、君普通に恋愛に詳しいじゃん。お兄さんとしてはその洞察力をもうちょっと自分のために使ってほしいんだが」


 何をおっしゃいますか、自分の研究が円滑に進むように、いろいろ提案しているでしょう。先輩の家には養蜂のノウハウ教えましたし、王妃様にはスペシャルなクリーム献上したではないですか。ええ若返った王妃様を見てハッスルした結果年の離れた王子か王女が夏に生まれるそうですが、あれですか私個人として出産祝いとか出さないとだめですかねえ。


「それは何とも。功労者として祝いの宴には多分呼ばれるから。というか農業の功績と、民間人救助の功績で今年の叙勲リストに入っているから家名考えておいた方が」


 贈り物はともかく、叙勲とかあんまり興味ないんですよ。私は虫の研究者としてこの国をある程度回ったら、よその国行くんですから。その時疑われるといろいろ困りますし。


「名目はいろいろあるんだけど、詰まるところ、ハイソサエティな方々が呼ぶには地位が足りないからねじ込んだが正解だと思う。あとは国の保護だね。他国に目を付けられると困るところが若干あるし」


 自分で言うのもなんですけど、昆虫専門の研究者とかあまり需要ありませんから目をつけられても微妙なんですけどね。まあ卒業までに博物学会員になれば、ある程度は箔が付くでしょうし、とりあえずあと2年は頑張りますよ。


「アルマ!このわからずやに何とか言ってくれ」


「アルマさん、私は悪くないですよね」


 何でこっちまで来てるんですか。そもそもこういうめでたい場で、皆さんを巻き込むトラブルやめてくださいよ。えっと先輩、シモーネ先輩、これここで解決しなければならない問題ですか。内輪なら内輪の悪い冗談で済むけど、外に出したらえらいことになる。まあそうでしょうよ。現在進行形で困ってますよ皆さん。そもそも解決していいんですか。その何というかジュリオ君のご実家って国外ですよね。いやうちの国と隣接してますけど、留学生に手を出し、すみません出したのですか、出されたのですか。


「そんな結婚前の男女がふしだらなことできるか!」


 性病考えるとそっちの方が安全なのでその点は安心しました。もう妥協してジュリアさんを側室ということにして、アナスタシア様は王妃様でいいんじゃないですか。それに私、明日からダズン伯爵家の領地の養蚕の視察するバイトあるんで、あんまり関わりたくないんですよね。

 そんなことより? これは王妃様案件ですので、予定を変更する場合、その理由を奏上しなければなりませんのでそれはそれで困りませんか? 私は嫌ですよ妊娠中の女性のストレスため込むような行為は。


「そ、そうかそれは済まなかった。母上に何かあったら父上から八つ裂きにされてしまうからな。アナスタシアこの件は後日改めて話そう」


「そ、そうですわね。アルマさん、その時の話し合いにはぜひ立ち合いを」


 いやー残念ながら、お二人とも本日で卒業と相成りましたので、学園にお立ち寄りの際は、広報部と保護者(学園長)を通じてお願いいたします。学園は治外法権で生徒同士の不敬もある程度許されますが、卒業されるとそうもいきませんから。あれ先輩何笑ってるんですか。


「いや、お仕事モードの君はステキだけど、俺はあと一年君の毒舌モードもみれると思うとちょっとうれしくてね」


 こいつMかよ。まあそれはさておき、私の名はアルマ(初心者マーク解除)。とりあえず就職難の悩みを抱えずに好きな研究ができる生活に満足して暮らしています。



 以下登場人物紹介

アルマ 

本編の主人公にして、ゲームにおける主人公のデフォルトネーム。素体は行動次第で何とでもなるため、趣味人は恋愛をステータスアップだったり、行動範囲の拡大ぐらいにしか考えていなく、中の人も、自分の欲望を満たすために適度に好感度を上げて後は放置した。余談だが、このゲーム恋愛ENDより、専門職ENDが多彩のため、恋愛の皮をかぶった職業訓練ゲーともいわれている。


エルシー

入学後にできたアルマの友人で実家は庶民から貴族まで手広く扱う商人。折を見てアルマの髪を整えたり、クリームを塗ったり、服を着せ変えたりするが、恋愛的にはノーマルである。


シモーネ 

侯爵令嬢で、学園内のファッションリーダーの一人。当初はアルマを自分の派閥に入れようとひと悶着あったが、クリームを塗らされたり、美容にいい食べ物を教えられたりと懐柔された結果、後ろ盾の一つとなる。恋愛的にはバイの気があるがENDはない。


先輩 

騎士様。伯爵家の3男で騎士科のエリート。ナンパだが後妻の子ということもあり、いろいろと複雑な感情の持ち主だったが、セミの蛹に頬ずりするアルマの姿を見て、世の中どうとでもなると悟りを開いた。なお本プレイでは、彼がアルマと結ばれる。


殿下 

次期国王。成績優秀な俺様タイプだが、さらに成績優秀な婚約者には頭が上がらない。本来なら主人公が二人の仲を取り持ったり(Nルート)、主人公と恋愛関係になって、婚約者と対峙したり(Lルート)、なぜか主人公に婚約者をNTRたりする(Cルート)のだが、本編では中途半端に放置した結果、謎の化学反応を起こして男(?)に走った。


ジュリオ 

追加DLCの隠しキャラ。男と女、二つの心に一つの体。選ぶのは貴女。本編における主人公の見立てだと、8割女で現代地球なら子供も作れるけど、この世界だと難しいとのこと。最近胸が膨らんできた。なお条件を満たすと完全な男や女になるらしいのだが、砂漠の虫は専門外ということで買ってないため特に興味がないとのこと。


アナスタシア 

海洋交易と国内最大の海軍を要する侯爵家の令嬢。世が世なら鉄の女として一国を率いるにふさわしい才女である。彼女がフラグになるイベントが多数かつ、彼女と仲良くなると購入可能な商品が増えるのだが、とりあえず国内の珍しい虫コンプしようということで後回しにした結果現在に至る。なお、彼女との百合エンドは人気である。


モブ貴族生徒 

庶民のくせに生意気とかいろいろ思うところはあるけど、恋愛より虫を優先する研究者肌だから、放置しよう。近くに立ち寄ったら何か商売のタネになりそうなもの見つけてくれると嬉しいです。あと親から何とかコネ築いて美容品をと。


モブ庶民生徒 

彼女は人間強度が高すぎて、私たちの枠に入れないでほしい。ナイフ片手にクマを解体したり、5メートルのミミズを一撃で仕留めるようなことができるのは庶民じゃないのだ。

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