狂依存
橘スミレ
第1話
「やばいやばいやばい時間ない」
白のシャツに腕を通し紺のスカートを履く。スカートと同じく紺のブレザーを着て、灰色のリボンをつけ、寝癖のついた前髪を押さえつけながら教室へ走る。今日は検診だから遅れちゃ駄目なのに。
「おっはよー」
時間ギリギリに教室に滑り込む。
「おはよう佳子。はやく着替えな」
幼馴染の奈々に言われ、急いで着替える。奈々はすでにいつもの白いカーディガンやピンクのタータンチェックのスカートから指定のジャージへ着替えている。
教室はじゃれあうクラスメイト達で騒がしい。どこかから胸を揉まれたのか悲鳴が上がる。
その様子を横目に見ながらジャージに着替える。着替え終わるとすぐにチャイムがなった。時間危なかったな。
「起立、気をつけ、礼」
「おはようございます」
日直の号令と共に挨拶する。その声は妙に浮ついている。教師の説明と共に身体検査の用紙が配られる。項目は身長、体重、視力、聴力、内科、歯科、そしてダイナミクス。
「ダイナミクスとは女性、男性とは別にある第二性のことです。Dom、Normal、Subの三種類があります。Domは支配したい、Subは支配されたいという欲求を持ちます。近年、ダイナミクスについてのトラブルが急増していますので皆さんは不用意にダイナミクスを聞かないようにしてください」
そう、今年はダイナミクスの検査があるので緊張しているのだ。
「Subだったらどうしよう」
「Normalでありますように」
そんな声があちこちから聞こえてくる。その他の警告がされてから、それぞれ検査へ向かう。
奈々と「めちゃ体重増えた」「視力悪なった」などど話しながら検査を受ける。どこのグループもそのような会話をしている。
だがその会話もここまで。最後の検査、ダイナミクスになると皆黙り込んでしまう。五人ずつ教室に入り、親指から血を採る。結果は一時間ほどでわかるらしい。この数滴の血液で自分の人生が決まるなんて不思議だな、などと私は呑気に考えていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます