第24話 戦場駆ける戦天使

➖・➖・アントワーヌ視点・➖・➖

 外堀に続いて内堀も埋め始めた。このままでは直ぐに内堀も埋められて、リュミエール王国軍の総攻撃により落とされる。

 オドレイは少しでも遅らせる為に、最後の魔力を振り絞って魔法を放った。宮廷魔導師達の魔力も限界に近かったのか、魔法は障壁を突き破り大ダメージを与えた。

 内堀へ入り込んでいた兵士達は全滅したので、直ぐに埋める事は出来ないと思われるのである程度の時間稼ぎになる筈だ。


「はぁ、はぁ……兄様、後は頼むね」

「任せろ。援軍が来るまで耐えてみせるよ」


 その後、オドレイは魔力枯渇状態となり本陣で休ませた。いつ来るか判らない援軍を待つ絶望的な状況だが、ガーデニア領軍と共に迎え討つ準備を始めた。


 その翌日、リュミエール王国軍は数に物を言わせて内堀を埋め始めたのだ……こちらの予想より1日早く動き始めた事で、我々は完全に後手に回る事になった。


 恐らく1日足らずのうちに内堀は埋められ、リュミエール王国軍は侵入してきて、砦内での戦いが始まると思われた。


 そんな中、ガーデニア領軍幹部の一部から提案が出される。それは、今からでもオドレイを引き渡しマルグリット共和国から即時離反をするというものだった。己の保身の為に必死に領王を説得したが、領王は頷く事なく徹底抗戦すると伝えたが、雲行きが怪しいので僕はオドレイの傍で連れ攫われないように見張った。


 リュミエール王国軍は夜通し内堀を埋めさせ、朝には殆ど埋められ数時間の内に攻め込まれると思ったその時、内堀で爆発音が起こり戦場は騒然となる。


 リュミエール王国軍はオドレイの魔法だと思ったのか、宮廷魔導師を呼ぶ声が聞こえるが、オドレイでは魔力枯渇状態で未だに僕の目の前で寝ている。そうなると答えは1つでサツキの〚銃魔法マジックガン〛だ。なんとか援軍が間に合ったと思い安堵した。


 その後も爆発音が鳴り響き、王国軍兵の叫び声が聞こえるので戦況は一変したのだと判った。僕はオドレイを起こして援軍が来た事を伝えて砦の櫓へ向かう。


 外はサツキの魔弾により王国軍はかなりの兵を失い、国境線へと退却を始めていた。

 そんな戦場を一頭の馬が駆け抜ける。その背に乗る少女を見て、僕とオドレイは抱き合い『助かった』と言いあって涙を流した。


「僕達を助ける為に〚戦天使サツキ〛が駆けつけてくれた。もう大丈夫だ……」

「えぇ、もう駄目だと諦めてたけど……サツキが来てくれた。本当に助かるのね……」


 そう言って、僕達は櫓から戦場を駆け抜ける戦天使サツキの勇姿を眺めていた。

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