第24話 早くも絶望
ふと思い出すのは、転生した時に聞いた声。
「…………《魂の勇者》アクセル、あなたに魂の祝福があらんことを……」
全てを理解した。
俺が何のために転生したのか。
この世界で俺がすべきことは何なのか。
「…もっと強くならないと…ダメなんですね、この世界を守るために」
衝撃的で信じられないような話だったが、不思議とすんなり受け入れることができた。
自分がやらなきゃいけない、とさえ思えた。
「…驚いた。怖くはないのか」
シリウスが意外そうな顔で呟く。
「分かりません。ただ、この話を聞いてなんだか腑に落ちたというか…今までの疑問が無くなってスッキリしたような気がします。」
「そうか……お前はなるべくして選ばれた存在なのかもしれないな。
…これから先、お前は数えきれないほどの困難にぶつかることになるのだろう。
だが、お前も今日から晴れてこの学校の生徒だ。困ったことがあったら何でも聞いてくれ。力になる。」
シリウスが目を細め笑うのを見て、俺はこの人のことを教師として、そして人生の先輩として信頼できる人だな、と思った。
「今日はお前にとってめでたい日だというのにいきなり悪かったな。帰って『主席合格』を祝われてこい。」
「ありがとうございます。帰ってさっそく父さんと母さんに報告したいと思います。」
「それがいい。ジムとマリーにはよろしく言っといてくれ。
…そうだ。大事なことを一個言い忘れていた」
「なんでしょうか?」
「お前、主席だから入学式で代表スピーチな」
(!?!?!?!?!?!?)
完全に固まる俺。
シリウスがニヤニヤしながらポンと俺の肩を叩く。
「まあがんばれよ」
「…ム、ムリです!そんなの僕には絶対できません!!!!!」
「おいおい、『この世界を守るために(キリッ)』とか言ってたかっこいい勇者様はどこに行ったんだ?」
「何で僕なんですか!!それこそ王子様がいるんだから彼が適任でしょう!
あとキリッは余計です!!!」
「主席のスピーチはこの学園の伝統だ。お前の一存で変えることはできない。
あとこの学院は完全なる実力主義だ。
王族だろうが貴族だろうが関係ない。
…まあ早いうちから顔が広くなるってのは、お前にとっていいことだと思うぞ。
これも立派な勇者への第一歩と思って乗り越えろ」
シリウスは絶望する俺を見て楽しそうにずっとニヤついている。
(ダメだ、ちょっとでも信頼できる人だと思った俺がバカだった)
入学式で大勢の前に立ち、代表スピーチをさせられている自分の姿を想像するだけで早くも憂鬱になってくる。
(終わった…完全に終わった……)
「まあ入学式まで2週間あるんだ。ゆっくり考えとけ」
この日は家に帰ると、ティナの家族も一緒に俺達の合格記念パーティーが開催されたのだが、そんな中でも入学式のスピーチのことを思い出しては憂鬱な気持ちにさせられるのだった。
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