恋文
貸し出されていた
「どうしたのですか」
「
貫之に聞かれて、袖の下で友則は丸くなる。
時があって(しばらくして)、倉を覗き込んで、呼ぶ声がする。
「貫之~」
「ここです」
貫之が答えると同じ時に、友則は袖をはね上げ、起き上がった。
倉に入って来る
「どうして
「剣内侍の、あ、所にいたから」
「何か言いさして(言いかけて)、
「これは貫之に。
躬恒は
「
友則は
躬恒から結び文を、貫之は受け取る。
貫之は手に息を吹きかけ、あたためて、結び文を解く。
躬恒は、棚と棚の間に座る貫之の前に座った。
「
「倉に
「倉に隠れて、
友則は言いながら、貫之が開いた
「妹の消息にまで、
浅緑の袖で
「
【令和語意訳・最近、DMして来る王侍従とか言うヤツがいて~、「紀氏の
「
【同じ紀氏だからって、剣内侍にもDM送ってるっぽくて、わけわかんない】
「ひゃはははははは」
友則は、鼻覆いしていた浅緑の袖を振り、笑みこだる(爆笑する)。
「あなたではないでしょうね。妹のことを明かしたのは」
貫之に言われて、友則は消息を指差す。
「消息に書いてあるではないか。『ゆかりの
紀友則にも、王侍従――
あはれとぞ見る
可愛らしいと思ってしまったら
武蔵野に生えている草の全てが
可愛らしく見えてしまうように
紀氏の
「
「言ってない。
「つくづく、さがなし(性格が悪い)ですね…」
「なので、決して真は言わぬぞ~」
友則は口の前に浅緑の両袖を重ね合わせる。
「何の話なの」
躬恒が聞くと、友則は向き直り、重ね合わせた両袖を開く。貫之は浅緑の袖で、小さやかな友則を包むと、躬恒に言った。
「
「……その王侍従に、
友則が嗅いでいたのは、躬恒の
「剣内侍も、紀氏だったよね」
躬恒の問いに、友則は浅緑の両袖を振り、笑い
「あの
「そんなっ、だって、
慌てる躬恒に、友則は、はなやかに笑む。
「鬼は、
「
「躬恒。王侍従は、
躬恒に聞く貫之に、友則は言う。
「おもしろいから、放っておけ」
貫之は
「物の
「妹想いなことだな」
「父に頼まれているのです」
「あの
「
たちまちに貫之は言い閉じた(断言した)。
「躬恒、王侍従は、
「――……剣内侍からの
躬恒の答えに、貫之は妹の文をたたんで、
貫之は、躬恒から少し離れて、友則の
「
生きている人の身から、あく
「今さら聞くのか。――あれは
「玉の緒…」
「
「……会いたくないですね……」
貫之は
年が明けて行われた帝の
章成の
忌みのために、紀貫之も、
ただ
章成は、あれを病で
定省が、代わりの
定省の方が
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