第3話 冒険者としての第一歩
ーー 初めての冒険者活動
タロウと冒険者登録をした私は、次の日さっそく依頼を受けることにした。
この世界の冒険者は、10歳以上のものであれば誰でも登録できる、但し犯罪者以外。
で、依頼自体はどれを受けても良いのだが、失敗を恐れてギルドが大まかなランクを付けている。
自己責任においての依頼受理であり、失敗すればペナルティーと賠償金が発生するので、皆慎重に吟味するようだ。
その為、報酬が少ない場合、ランクが低い依頼でも塩漬けになることが多くギルド員はそれを新人に振り分けることがある。
私達にも当然その方面の依頼が振られた。
「良いですよ。記念に受けられるだけ受けますよ。」
と言うと目の色を変えて山のように依頼を持ってきて吟味し始めた。
時間がかかるようだったので、私達は一息つくためにお弁当を頼みながら一服して待った。
「これだけ依頼を受けて貰えると助かるのですが。」
と言いながら20枚ほどの依頼を見せた。
どれも低ランクだが依頼の報酬が安いとか、場所が遠いとこで塩漬け状態のものばかりでそれが場所ごとに地図に記載されて渡されたのだ。
「んんと・・・5日ほどの日程かな。良いですよ受けます。」
と答えた。
ギルドを出る際ギルド職員が拝むように頭を下げたのが印象的だった。
ー 初依頼
塩漬けの依頼を受けるために7日ほどの食料と野宿用の必要品を買い揃えて私達は、東門から出発した。
「ご主人、羽虫のような依頼になぜその様にニコニコしているのだ?」
タロウは私がこれらの依頼を受けたのが納得できない様だ。
「あのね、なぜだか私は昔の記憶が残っているの。それがいつの記憶かわからないがその中で冒険者は初めはこんな依頼を受けるものとあるのよ。だから私はそれをなぞる様に受けたのよ、これが冒険者の醍醐味というやつだそうよ。」
と答えて先を急ぐ、タロウは納得できないが私の後について歩く。
「はいこれでこの依頼は終了です。完了のサインをください。」
もう何度目かの言葉を依頼者に発して私は次の依頼へと移動を始める。
かなり遠くまできた、ここの依頼が距離的に一番遠い依頼だ。
内容は普段見かけない魔物が出始めたという情報で、その原因究明だ。
村長たくに立ち寄り現在の状況を尋ねると
「やっと来てくれたか。もうこの村も捨てて逃げようと考えていたところじゃ。ゴブリンから始まった魔物が今ではビッグボアまで何度も見かける様になった。怪我人もすでに10人ではきかない。」
という村長に
「それではまず怪我人から見ますね。大丈夫です私は治療魔法が使えるし依頼料で十分です。」
というと、村の古びた教会に向かった。
広間には体を包帯や添木で巻かれた怪我人が多数いた。
「怪我人はこれで全員ですか?」
「はいここに居るもので全てです。」
と答えるシスターにニコリと笑顔を返すと
「ヒール」
と唱えた、すると怪我人の怪我の部分が光り輝き出す。
光が消えると
「痛くない。」
「動くぞ」
という言葉が聞こえ始める。
私はシスターに会釈をして教会を出る。
「タロウ、今度は貴方の力を見せてね。かなり大きな群れが来てるみたいだから。」
と言いながら森を見つめた。
ー スタンピード
今回の異変はスタンピードの予兆だった、しかし確認するのが少しばかり遅くすでに森から魔物が溢れ出してきていた。
私は魔物を1箇所に集めるために
「土よ!壁を作れ!」
と唱えて森から出てくる魔物を1箇所に集める様に巨大で長大な壁を作り上げた。
壁に行き場を遮られた魔物たちは、押し合いながら壁に沿って私たちの方に接近する。
「私は空を飛ぶ魔物を倒すのでタロウは、地を走る魔物をよろしくね。」
というと私は上空に飛び上がる。
ワイバーンを始めとする空を飛ぶ魔物の群を見つけた私は、
「凍てつけ!」
「痺れろ!」
「燃え尽きろ!」
と創造した魔法を発動する。
次々に凍りついたり、燃え尽きた魔物が空から降って地落ちる。
それにとどめを刺しながら私は太郎の方を見る。
タロウは身体を数十倍に大きくして口から炎や冷気を吐き出して魔物の進行を止めると、大きな竜巻を起こしてそこに雷撃の魔法を合わせて魔物の群れに叩きつけた。
空高く舞い上がる無数の魔物たち、その竜巻にさえ耐えた大物の魔物にタロウは突撃して行った。
「ドカーン」
空気を震わす様な音が何度となく響き、その後で
「ズドーン」
と言う大きなものが倒れる音、タロウの体当たりに絶命する魔物たち。
私は生き残った魔物たちをとどめを刺しながら収納していく。
村人はその様子を遠くから見ながら震えていた。
「あの子らは神の使いなのか。ありがたや、ありがたや。」
と祈りながら終わるのを待っていた。
しばらくしてすっかり静かになったところに、私が姿を見せると。
「ありがたや。村をお救いしていただきこれ以上の幸せはございません。」
と村長以下村人全員が頭を地につけてお礼を言うのだ。
「もう大丈夫ですよ。来るのが少し遅くなったので幾つかお土産です。」
と言いながら美味そうな魔物を30体ほど取り出して私達は村を立ち去った。
ー 依頼を完了してランクアップ
冒険者にはランクと言うものが有る。
SからA、B、Cという順でEまであるのだが、それが冒険者の力を示す表示でも有る。
Eランクはひよこ、Dランクはその上でCランクになるとベテランと呼ばれる。
Bランク以上はごく少数でAランクあたりから人外になる。
今までSランクと呼ばれた冒険者が数名存在したがかなり昔のことで、実際にどの程度強かったのか物語でしか語られていない。
私達は塩漬けになった多くの依頼と魔物のスタンピードの壊滅という信じられない成果にギルド内は目の回る様な忙しさになっていた。
「これ以上は捌けない、また10日後に持ってきてくれ。」
解体場では山の様な魔物を処理できなくなり、付近のギルドに応援を頼むほどだ。
「お前たちのおかげで村と言わずこの街も助かった。お礼を言う。」
頭を下げるギルマス、
「そうですね今回は、対応が遅すぎですね。私たちが受けなければ今日辺りこの街も危なかったと思いますよ。」
と言いながら私は
「それで私たちのランクはどうなりますか?一気にBランクくらいにはしてくれますか?」
と言えばギルマスが
「とんでもない、俺の意見はSだよ。でもこんなことは今までなかったから多分A
ランクまでだと思う。申し訳ない。」
とまた頭を下げた。
「とんでもない、Aランクで十分ですよ。お金もたっぷり入りそうなので、満足してます。」
と答えるとホッとした表情のギルマス。
私達はしばらくのんびりすることにした。
ー 家を買おう
しばらく依頼を受ける必要がなくなった私達は、街で買い物をしたりしていたが
「どうせなら家を買おうか。」
と私がいうとタロウが
「何のために」
と聞いてきた
「記憶が少しずつ戻ってきてるんだけど、美味しいし料理や便利な物を作りたくて。」
と答えて不動産を扱う商会に足を運んだ。
「いらっしゃいませ、セシル様タロウ様。何か入り様ですか?」
と商会の商人が声をかけてきた
「え!私たちの名を知っているのですか?」
「勿論、私達は商売人です。情報は最新でなければいけません。」
と答えたので納得しながら
「家がほしんです。魔道具を作る部屋や畑なども有ると良いのですが。」
と希望を言うと
「ではこちらに」
と部屋に通されるとすぐに数枚の物件の載った紙が。
「おすすめはこれです、ある豪商が建てた屋敷ですが経営が行き詰まり売りに出されています。金貨2000枚です。他にもありますがこれを見てみますか?」
と強めに押すので了承して馬車で内覧。
その物件は豪邸でした、お風呂まである屋敷で庭も広く小さな畑なら十分できるほど。
「これに決めます。支払いは一括で。」
と言いながら現金をその場で支払い、契約を終えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます