第18話 エピローグ

 エルノー伯爵は、妻と離縁した。

 二人の罪は軽微なものとして大きな刑罰は課せられなかった。しかし、悪質であり社交界にはもう顔を出せないだろう。

 さすがの伯爵も薬を盛ってまで既成事実を作ろうとした二人には愛想も尽き果てた。


 姉の婚約者に懸想し、これまで蝶よ花よとおだてられ、何でも思い通りになっていたテューネは当然婚約者も自分のものにできると思っていた。

 しかも幸いなことにエヴェリーナが行方知れずになり、チャンスだと思っていたところにのこのこ戻ってきた。

 そんなエヴェリーナに腹が立ち、力づくで奪ってやろうとしたらしい。



 なぜ自分の娘をないがしろにしてしまったのだろう。

 新しい家族が馴染むためと言いながら、新しい妻と美しい義理の娘が自分を頼ってきてくれることがうれしくて自分の娘よりも二人を優先した。

 二人の尊敬のまなざしが自尊心をくすぐり、自分が男として大きくなったように錯覚をしていたのだ。

 エヴェリーナにそれを見透かされて馬鹿にされるのではないかと勝手に勘ぐって、彼女たちと仲良くし優越感に浸ることで自尊心を保った。

 一度そうしてしまうと今度は後ろめたさからエヴェリーナとちゃんと向き合う事ができなくなった。


 だけど、心の中ではずっと実の娘として大切には思っていたのだ。

 自分が間違っていた、見る目がなくあんな親子を伯爵家に入れた自分が馬鹿だったのだ。

 この間違いを正して、今度こそエヴェリーナと向き合いこれまでの分彼女を大切にしなければならない、伯爵はそう思った。


 伯爵は罰金刑の罰金を手切れ金代わりとし、それ以外の財産は渡さず二人を離籍し、屋敷から追い出した。

 そのうえでエヴェリーナに同居を求めたが、さっさと婚姻届けを提出し王家の許可を得たステファンが返すはずがなく、またエヴェリーナも望まなかった。


 伯爵は広い屋敷で孤独に暮らすこととなった。


 エヴェリーナとステファンは死ぬまでお互いを慈しみ、2男1女を授かり、幸せに暮らしたという。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る