第15話 溺愛が止まらない 2

 ステファンはドランの街でアルビンとエヴェリーナの後をつけていたあの日、同じく二人の後をつけていた女の目つきが気になり、調べることにした。

 しかし、翌日にはその女が姿を消したのだ。

 その女の住処、働いていた飲み屋などを調べると胡散臭い商売をしていることが分かった。

  そしてその二日後にその女の遺体が川から上がった。


 ステファンはロイドの力も借り、本格的に調査をはじめた。そんな女と親しいアルビンはどのような人物なのか。

 するとドイル商会として手広くやっている一方、もう一つの顔が見えてきた。母国に報告し、詳細な調査が行われることになった。


 本当は旅に出るエヴェリーナについていきたかったが、エヴェリーナに近づいている男の正体を暴くことが先決だ。すると密輸に麻薬販売にと犯罪に手を染めていたことが分かった。

 ドラン国にも報告し、証拠が固まりしだい捕らえる予定であったが、なかなか尻尾を掴ませず手間取っているうちに、エヴェリーナが戻ってきてああいう結果になったのだった。




 王宮のステファンの部屋で、メイドが運んできてくれた紅茶をいただき、今までで一番おいしいと感動しながら過ごしていた。ステファンが戻ってくるのが遅く、旅の疲れもありいつの間にかソファーで熟睡してしまっていた。


 ふと目が覚めると、もう部屋の中は明るくなっていた。

 いつの間にかふかふかのベッドの中にいた。

「ひゃあっ?」

 きゅうに後ろから手が伸びてきて抱きしめられた。

「おはよう。昨日は遅くなってごめんね。報告が長引いてしまって」

「ステファン様!あ、あの…ここまで運んでくださいました?」

「うん、ソファーでよく眠っていたから。」


 ぎゅうと抱きしめる力を強めながら後ろからくっついて髪や首筋の匂いをすんすん嗅いでくる。

「困ります!昨日は湯あみもしてないから・・・あ、汚いのにベッドですいません!!」

 思い出して慌ててベッドから出ようとしたが、手を弛めてくれず叶わなかった。

 くるっと向きを変えさせられ、気のすむまで口づけをされた。


 あれから、タガが外れたようにスキンシップが激しい。

「殿下が会いたいと言ってるんだけど、大丈夫?」

「ええ?!王太子殿下ですか?どうして私なんかに?!」

「あの事件の当事者っていうのもあるけど、本当はただ面白がってるだけだよ。気が進まなければ断っておく」

「いや、それは不敬では・・・私のせいで殿下にもご迷惑をおかけしたので謝罪いたします。」

「それは僕が勝手にしたことだから謝ることはないよ。ただ、行方をくらませたことは貴族である以上責任は問われるかもしれない。だから僕が不貞を疑われるようなことをしたため、傷心した君が家出したということになってるから。」

「それではステファン様に非があるようになってしまいます。自分がしたことは自分で責任を取ります。」

「だって、僕が不貞した記憶が君を苦しめてるんだから僕が原因であることに変わらないよ。妻の名誉を守るのも夫の務めだ。」

「ステファン様・・・貴方は優しすぎます・・・もっと怒っていいのです、私をもっと責めてください。」

 ステファンはエヴェリーナの涙をぬぐうと、再び口づけをした。


 そんなステファンに前回と同じ、いやそれ以上に愛しい気持ちを抱いてしまった。

 離れたくない、誰にも奪われたくないと強く思った。そうなるのが怖くて逃げたのに。

 もしまた前回のように妹に取られたら・・・今度は殺される前に殺してしまうかもしれない。

 自分の中に湧き起こった感情が怖かった。

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