第6話 彼女現る

 ある日、エヴェリーナが一人で街に買い物に出た。

 いつもお世話になっているアルビンや屋敷の使用人たちにちょっとしたプレゼントを探しに来たのだ。


「ちょっと、あなたアルビンのところの子?」

 見ず知らずの女性に呼び止められた。

「え?そうですが・・・あなたは?」

「彼と親しくしている者よ。最近あなたがよく一緒にいるようだけど、勘違いしないでね。」

 言葉の端々にけんがある。ああ、この女性はアルビンを好きなんだ。

「私は仕事上の関係ですから。ご心配なく」

「それにしては手をつないであちらこちら出かけているそうじゃない」


 それを突っ込まれると言い訳しがたい。アルビンから手を差し出してくれて、その扱いがうれしくて手をつないでしまっているのは確かだ。

 ちょっと絆されてときめくこともないこともないっていう現在の心境。

 それに彼は求婚までしてきたのだから他に親しい女性がいるとは思わなかった。


 しかし彼女がいるなら話は別だ。絆されている場合ではなく、気を引き締めなくてはならない。

「不慣れな私を心配してくださったのです。今後はそのようなことは致しませんわ」

「本当かしら、早く家も出ていってちょうだい。既成事実で結婚なんかされてたまるもんですか!」

「そんなこと考えていません!紛らわしい態度を取ったのはお詫びしますが、生活についてはあなたにとやかく言われることはありません。ともかく、あなたの言い分はわかりました。失礼するわ」


 後ろから待ちなさいと声が聞こえるが、無視をしてついつい怒りで早足で家路についた。さっきまでのプレゼント選びの楽しい気分が台無しだった。


「はあ~私って男運が悪いのね。いつもいざこざに巻き込まれる気がするわ」




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