第40話 文化祭の出し物は?

10月になりそろそろ文化祭ということでクラスの出し物を決めることになったのだがそれより前に学校に来てすぐ蒼井が詰め寄ってきたので出し物どころじゃない。


「昨日送ったでしょ? 今日は別の人たちと食べるって。というか今まで一緒に食べさせられてたんだから今日ぐらい良くない?」


「 いかにも私が無理やり一緒に食べさせてるみたいな言い方ですね! 私と一緒にご飯を食べるのは不満ですか!」


「いや無理やりでしょ」


『蒼井さんから誘われてるのに断るとかふざけてんのか!』

『吹雪の代わりに俺が行く!』


周りから色々野次が飛んできてるが俺は別に蒼井と一緒にご飯を食べること自体に不満がある訳では無い。ただ、俺もたまには別の人と食べたい時もあるし今日関しては茜さんから誘われたし。


「俺が居なくても紅葉とか奏音の3人で食べればいいじゃん。別に俺がいる必要は無いでしょ、たまには別の男子とも食べてあげたら?」


常に周りから殺意を向けられているのでそれを少しでも和らげるためにも助け舟を出してあげよう。それによって俺も得ができるのでウィン・ウィンの関係である。


「というかそれより文化祭のことでしょ。向こうで戦争じゃんけんしてる男子は置いておいて蒼井は文化祭で何がしたいの?」


「吹雪くんと一緒に出来ることならなんでもいい……。吹雪くん以外の男子は来なくていい、信用出来ないから」


男子たちの叫び声が聞こえるがまぁあそこまで欲望を丸出しにしていたら怖がられるに決まっているだろう。やっぱりなんで全てのことに俺が関わってるんだよ、紅葉とか奏音でもいいじゃん。


というか俺以外に男子の友達を作ってください本当に。


「ちょちょ、蒼井ちゃん。ちょっと耳貸して」


クラスの女子のうちの一人が蒼井に何かを耳打ちしたあと、さっきとは別人のように蒼井の対応が変わった。一体何を言ったというんだあの女子は……。


「さっきは酷いこと言ってごめんね……。これからは男子とも仲良くしたいんだけど、ダメ……かな?」


まぁ断るやつは一人もいないが誰が蒼井と昼を食べるかで言い争ってる中1人だけその争いに参加せずに傍観している1人の男子がいた。


「えぇっと、緋月くんだっけ、今日の昼一緒に食べない? そのまま友達になりたいなぁって」


「僕なんかで良ければ」


まぁ女子からしたら争ってる男子より争いに参加せずに静かにいる方を選ぶよね。今は蒼井が俺以外の男子の友達を作るチャンスでもあり、俺が初めての男子の友達を作るチャンスでもある。


「白神もよろしくね、普段から一緒に蒼井さんと居るし関わることになると思うからね」


「よろしく緋月、あと一応言っておくけど俺は蒼井と付き合ってるわけじゃないから。距離が近いから俺も色々大変なんだよね」


今まで俺の友達は全員女子だったので話してこなかったが男子の友達ができたことによって分かりあってもらえるところが増えた。俺は平然を装ってるけどこの前蒼井が『惚れさせるから』って言った時は化けの皮が剥がれるところだった。


奏音は何もしてこないし紅葉に関しては同棲時期もあって妹だと思ってるのでどうもないが蒼井だけ例外である。


「お互いにネックレスを渡しあってるのに付き合ってないんだね」


「蒼井から聞いた? でもそれ小6の頃の話だし。そもそも蒼井が昔遊んでたあの子だって知ったのも最近のことだよ?」


「もはや付き合っちゃえば?」


「ははっ、少なくとも高校の間は無理かな」


朝から騒がしかったが先生が中に入ってことで争っていた男子たちは席に着いた。もう既に蒼井と一緒にご飯を食べる男子が決まってるとも知らずに。


「えぇ、この学校の文化祭は2日間、そして比較的自由なので基本的には何をしてもいいぞ。食べ物系でもアトラクション系でもいいが準備が間に合わないようなやつは避けろ。必ず当日までに準備が間に合うやつにしろよ」


まぁ欲望として言うならジェットコースターとかをやってみたいが現実的に考えるなら喫茶店とかお化け屋敷が妥当だろう。俺はなんでもいいのでクラスの意見に任せるとしよう。


「蒼井ちゃんが吹雪以外の男子と楽しそうに話してるの初めて見たよ」


「そうだねぇ、蒼井さんは白神くん以外に興味になさそうだったのに……。あの子が何を吹き込んだか分からないけどすごいことには変わりないねぇ」


出し物決めをしている方に耳を傾けてみるとやはり喫茶店とお化け屋敷は候補に上がっていたが他のクラスとは被っていけないのでくじ引きになってしまうだろう。


ん? 黒板に書いてある候補の中には普通の喫茶店じゃなくてメイド喫茶と書いてある。誰がメイドをしてどうやって衣装を……いや衣装は問題ないか、借りられるツテが近くにあったわ。もしメイド喫茶に決まったとしたら今日の昼に聞いてみるとしよう。


「うへー、メイド喫茶に決まっちゃったねぇ」


「まじ? まぁ俺には関係ないことだけど……。蒼井は絶対メイドにさせられるな」


「そりゃそうだよねぇ……え? 僕と紅葉もなのぉ!?」


勝手に決められてることには同情するが普通に可愛さとかメイド服が似合いそうなのを考えたらこの3人が選ばれるのは妥当な気がする。


蒼井は文句なしで似合うし紅葉はロリっぽいのでそれはそれで客に好かれそうだ。奏音はボクっ娘、それだけで十分である。


「でも3人だけじゃ絶対に足りないよねぇ!? それに僕は料理できないよぉ……」


「大丈夫だよ奏音さん。3人は接客だけをやってもらって料理な他の誰かに頼むから」


「あ、それなら吹雪くんが料理担当でいいと思う! 前食べた時すっごい美味しかったんだよ! さすが一人暮らししてるだけはあるって感じだったよ!」


蒼井の子の言葉に乗って紅葉まで俺の料理のことについてクラスメイトの前で口にしたので完全に料理担当は俺がしないといけない雰囲気になってしまった。


「作るのはいいけどメニューはそっちで全部決めてね。メニューがあれば俺は作るからさ」


「じゃあこれで決定ね!」


「あ、でも服はどうするの?」


他の人たちは重大な事を忘れていたという感じになってはいるが俺は借りようと思えば借りることが出来る。


「じゃあメイド喫茶はできないよね! うん、別の案を考えないとだ!」


余程メイドをやりたくないのか、奏音は珍しくいつもの口癖が抜けて話している。


「あ、俺借りられるツテあるよ」


「白神くーん!?」


うん、悪いけどシンプルに3人のメイド服を見てみたい。これは俺がどうとかじゃなくて男子も女子も含めて全員が見たいだろう。


ということで話し合いが終わり、学校全体でもメイド喫茶はいなかったので俺たちのクラスの出し物はメイド喫茶で確定した。


そして俺は昼を食べるのと服の交渉のために食堂に向かった。


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