第21話 白神吹雪は呼び出される②
俺は今日も屋上に呼び出されてしまった。それも昨日と同じ人ではなくて別の人、しかも女子。ただし蒼井や紅葉ではない全く知らない女子からだ。
普通なら告白とか色々考えてしまうが昨日のことがあったので呼び出しに対して良いようには考えられない。
というか相手の名前を知らないのは問題では?
「……なんで居ないんだ?」
早く来すぎたか? と思ったが俺は言われた時間通りに来たし、向こうが遅れてるのかなぁ、と思っている後ろから目を隠された。
「初対面で随分積極的だな。まぁ君の名前知らないからそれ以上何も言えないんだけど」
「僕は
奏音は俺の目から手を離して俺の隣に腰を下ろして口を開く。
「呼んだのはねぇ、ちょっと白神くんに手伝って欲しいことがあるんだぁ」
「犯罪に手を染めなかったら基本的に手伝ってやるぞ。まぁ誰かが傷つくと言うなら絶対に手を貸さないけど」
「犯罪になんか手を出さないよぉ」
奏音の口調はあいうえおの捨て仮名が入っており、話し方はゆっくりでおっとりとしている。
恐らくカワイイ系として男子にも女子にも人気なタイプだと思う。
「それでね、告白されて断ったんだけど相手がしつこくてねぇ。いくら断っても諦めてくれないから誰かに彼氏の振りでもしてもらおうかと思ったんだよぉ」
それくらいなら別に受けるが、別に俺じゃなくても良かったじゃないか? だって初対面だし、もっと話したことのある男子にした方が良かったのでないだろうか。
あぁ……でも彼氏の振りをするってことは紅葉とか蒼井と一緒にいるのは少し違和感が出てしまう。
その奏音に告白した男子がこの姿を見て直ぐに諦めてくれればいいが、長引けば蒼井達を勘違いさせてしまいそうだ。
「まぁ別にいいんだけどさ、全てが終わった時にはどうするつもりなの?
『嘘でしたー』なんて言うのはダメだし、別れることが難しいと思うけど」
「確かにそうだねぇ。じゃあ彼氏の振りはやめておいて、結構親密な関係ってことにしておこうよぉ。初対面でこんなこと言われてもあれだと思うけどねぇ」
また俺の周りに女子が増えるのかと思いながら、これは人助けだと自分に言い聞かせる。
とりあえず奏音と友達になれたことなので親密な関係っぽく振舞って行こうと思う。
「んで、親密な関係と言っても具体的には何するの? 紅葉みたいに俺に抱きついてくるか?」
「僕にそこまでの勇気はないよぉ、皆月さんみたいに特別な関係でもないわけだし。普通に白神くんの席まで行って話す程度でいいんじゃないかなぁ」
「あぁ、それでいいよ。じゃあ俺は帰るけど、奏音も気をつけて帰れよ」
……なんで初対面のはずの奏音が俺と紅葉の関係が普通じゃないことを知ってるんだ? 学校で口にした覚えはないが紅葉が言ったのか?
俺は足を止めて空を眺めてる奏音に尋ねる。
「……なんで知ってるんだ? 俺は蒼井以外の人に口にした覚えは無いが」
「僕は一応、中学の頃から紅葉と友達なんだよぉ? つまり僕が知ってるのは紅葉から聞いてたってことさぁ。いやぁ優しい人が助けてくれたって毎回聞かされてたねぇ」
俺の知らないところで俺の噂がされてたことに普通に驚くが、紅葉は俺の事を誇張して言い過ぎじゃないか? 俺が優しいなんて有り得ない、当たり前のことをしただけで優しいとはならないだろう普通。
困ってる人を助けるなんて良くある話だろう?
「これからも紅葉と仲良くしてくれ。俺がこんな事言うのもおかしな話だけど」
「余程のことがない限り僕と紅葉の仲が悪くなることは無いと思うよぉ? この行為が紅葉の目にどう映るかは知らないけどねぇ」
俺はおかしな事に男子より女子と話している時の方が多いので紅葉が変に思うところは無いはずだ。
実際吹雪に男性の友達はいないし、関わっている人も大体は女性だ。この前のをカウントに含めたとしても男子とはほとんど関わっていないのだ。
「まぁいいや。今度こそ本当に俺は帰るよ」
「ごめんねぇ、こんな面倒なことに付き合わせちゃってぇ。物事が終わったらお礼としてどこか連れて行ってあげるよぉ」
お礼なんてしなくていいと思いながらも奏音がお礼をすると言ってるのでその厚意を無下にする方が悪いので「ん、いつ終わるか分からないけどな」とだけ口にして今度こそ屋上から去った。
「こんな無茶ぶりにも応えてくれるなんて、紅葉の言ってた通りの優しい人だねぇ。まぁそうじゃないと紅葉が興味を持つなんてことはありえないかぁ」
あの男性嫌いの紅葉が一番最初に気を許した男性、気になってたんだよねぇ。まぁ僕は友達で居れればいいし、紅葉の邪魔をする訳にはいかないし、傍から見守っておくとしようかなぁ。
「……白神くんは2人の女の子を誑かしてるんだからタラシだねぇ。本人は無自覚っぽいけど、好意を寄せられてることには気づかないものなのかなぁ?」
僕はこれでも女の子なので男の感性なんて分からないがとりあえず今のところは見守っておくだけだ。
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