クラスに俺の彼女を名乗る美少女が転校してきた
桜木紡
第1話 プロローグ
俺の名前は
見た目というのは髪色、一般的な日本人なら髪色は黒か茶色なのだろうが俺は銀色だった。
恐らく親からの遺伝なので仕方ないと思うがガキ達はそんなことを理解せずにただ俺を避けてきた。だが高校に入って理解してくれる人が増えたおかげで俺は学校生活を満喫している。
自分語りはここまでにしておいてどうやら夏休み明けの今日、クラスに転校生が来るらしい。
「それじゃあホームルームを始めるぞ! 昨日も言った通り今日は転校生が来ている、入ってきていいぞ」
扉が開いて中に入ってきたのは俺と同じ銀髪だった。
「
真っ直ぐに長く伸びた銀色に輝く綺麗な髪。
サファイアのような青色の目。
そして何よりも無敵の笑顔。
その三つの要素だけでクラスにいる男子を夢中にさせただろう。実際、自分だってそのうちの一人だ。
だけど俺とは遠くかけはなれた存在で、関わるようなことを諦めていたその時だった。
「久しぶりですね、吹雪くんっ!」
「ん?、蒼井は白神の知り合いなのか。それじゃあ白神の隣がちょうど空いてるからそこに座ってくれ」
ちょっと待ってくれ、彼女は俺のことを知ってみるみたいだけど俺は彼女のことを知らない。
見たことも聞いたこともない、そのはずなのに彼女は俺のことを知っている。
「知り合いというか、吹雪くんの彼女です」
「は!?」
その彼女の発言によってクラスの空気がざわついたのと同時に俺の机に男子たちが詰め寄ってきた。
「ど、どういうことだよ吹雪! お前、紅葉さんと付き合ってるんじゃねぇのかよ! あ、浮気か? 裏切りやがったのかてめぇ!」
「落ち着けお前ら、俺は蒼井さんのことを知らないしお前らが勘違いしてるだけで俺は紅葉と付き合ってないからな? というかお前に名前呼びされる筋合いは無い、友達じゃないんだから」
ただ、紅葉に助けを求めることが出来ない理由がある。
まぁ毎朝一緒に登校していたら勘違いぐらいはされるか。
「んーじゃあ、元カノということで」
彼女の中では俺と付き合っていたことになっているらしく、男子たちの圧はより増していった。
「盛り上がってるところだが授業始めるから早く座れー」
────危ねぇ、何とか助かった。
と思ったが一番の問題がすぐ隣に座ってるんだった。なんで彼女が俺の彼女と言ったのか、なんで俺のことを知っているのか……。
転校したての彼女が教科書を持っているはずもないので俺は机をくっつけて教科書を見せているのだが彼女がずっと耳元で囁いてくる。
「本当に私の事、覚えてないの?」
「覚えてるどころか知らないって、そもそも君がなんで俺のことを知ってるのかも分からないし。君と俺って初対面だよね?」
「むー。まぁこの場はそういうことでいいよ」
この場はというところが俺の中で引っかかるが、俺が知らないと言った時から彼女はどこか寂しそうだった。
別に俺は記憶喪失をした訳では無いし、俺の記憶の中に銀髪の少女なんて居なかった。
でも彼女のような面影があった少女ならひとり居た……でもその少女の髪色は黒だったしもうあの日から俺はその少女に会っていない。
まあ会えなくなったのは仕方のない事だ、海外に引っ越してしまったのだから。
※※※
昼休みになり1人で弁当を食べようと屋上に向かおうとしたら、俺の彼女と言い張る蒼井さんも着いてきた。
「なんで着いてくるんだよ……食事は1人で取りたいタイプなんだけど。というか知らない相手となんで昼を食べなきゃならんのだ」
「そこまで言うなら吹雪くんが自力で思い出すまで私は吹雪くんに付きまとうからねっ!」
おいおい、本当に勘弁して欲しい。周りの男子たちから殺意と籠った視線を向けられるのは避けたいのだが蒼井さんの意思は硬そうだ。
まぁ結局は彼女に押し切られ一緒に弁当を食べているのだが屋上に人が居なくてよかったと思った。
「はい、あーん」
「はい、あーんじゃないよ、なんで初対面の相手にこんなことをされてるんだ俺は。自分の弁当があるから別にいらないよ、それに殺されたくない」
「ふーん……その指輪付けてくれてるんだ」
蒼井さんが何か呟いたのだが聞き取ることが出来なかった。けど蒼井さんの視線は首にかけてあるチェーンに繋がれた指輪の方を向いている。
まぁ俺みたいな人が指輪をつけてるのがおかしいと思われたか。でも他人になんと思われようともこの指輪を外すつもりは無い、だってこれがあの子と過ごした証明なんだから。
「吹雪くんが忘れてるんだったらそれでいいよ。これから私が思い出させてあげるから」
蒼井さんはそう言って微笑んだ、その笑みはやっぱり誰もを魅了するような可愛い笑みで。そんなことを思うと同時に今後の学校生活は苦労しそうだなとも思った。
こんな美少女が自ら俺に関わってくるんだから今までの生活と一変してしまうのなんて今からでもわかる事だ。
そんなことを考えていたら蒼井さんは別の男子と話していて、一瞬で人気だなと思った。
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