第13話

 無事一日の授業を終えて、今日は直接『野獣の高原』前の冒険者ギルド基地に向かう。


 実は昨日冒険者ギルドの鍵付きロッカーを借りて、装備を置いて帰っていたのだ。

 休憩用の食料などは未だにアイテムボックスの中に入っている。家との往復の時間を考慮しなくて済む分、ダンジョンに潜れる時間も増えるだろう。


「今日は3時間くらい潜る予定だから、休憩しながらになるけどいいよね?」


『はい、旦那様の御身体が最優先で御座いますから』


『プル!(主の休憩中は僕が守るから任せて!)』


 冒険者ギルドについた俺は、受付のお兄さんになぜか呼び止められた。


「河野雄大様、あなたは既定の魔力量の魔石をギルドに提出しましたので、Fランク冒険者からDランク冒険者にランクアップ致しました。ランク制度について詳しくは冒険者ギルドのサイトに御座いますので、確認してください」


「連絡ありがとうございます。今日は3時間ほど潜る予定ですので」


「かしこまりました、ご無事の帰還をお祈りいたします」


 昨日冒険者ギルドで換金した魔石の量で、既に冒険者ランクが上がっていたようだ。


 ちなみに冒険者ランクとは、冒険者ギルドが決めているエネルギー供給貢献度の指標のようなものだ。


 ランクが上がれば上がるほど、世界に貢献している人間であるとして、新たな身分証明の手段として用いられる予定らしい。


 初めはみな平等にFランクから始まり、ランクが上がれば上がるほど冒険者ギルドからの支援が手厚くなるようだ。


「たった一時間のダンジョン探索でランクアップって……これが先行者利益ってやつかな?」


『そうで御座いますね……各国で冒険者が増えれば増えるほど、魔石の換金額の割合も下がるでしょうし、ランクを上げるための貢献度も多くなっていくでしょうし』


 何事もスタートダッシュを決めたものがほぼ有利になる。そう考えると、ツナミに色々としてもらった俺は他より圧倒的なアドバンテージを得ているのだ。


 ロッカーに預けていた装備に手早く着替え、ダンジョンに突入する。

 ただひたすらレベルを上げるために、フィールド型のダンジョンを東奔西走する。


 昨日よりレベルの高いモンスターを倒すため、ツナミを片手に駆けていく。


 グレイウルフを片手間に倒し、より多くの気配があるほうへ向かうと、そこにはグレイウルフよりも一回り大きい赤い狼型のモンスターが群れをつくっていた。


【名前】未設定

【種族】レッドウルフ

【Lv】23

【職業】未設定

【スキル】――――

【情報】――――――――


 すぐさま鑑定をしたのだが、種族とレベルしか読み取れなかった。

 つまり格上、しかもそれが五体で群れている。……普通に考えたら絶体絶命のピンチだろう。


 しかし俺にはツナミもミナモもいるから、何も問題がないのだ。


 群れに突っ込みながら、ツナミの能力を使い、水魔法で生み出した水流を操作して、レッドウルフの群れを二体と三体に分断する。


 まずは二体の方の片方にツナミを投擲する。ツナミが頭に刺さり靄になるのも確認せずに、手元にツナミを呼び戻して残りの一体に飛び掛かり、ツナミを突き出し倒す。


 分断した残りの三体を引き付けていてくれたミナモと合流して、残りも淡々と対処していく。


 水魔法と火魔法の合わせ技で湯気を作り出し、レッドウルフを怯ませる。その内にミナモと二人で一気呵成に責め立てる。


 戦いが終わると、今までで一番体が熱を持っている感覚がする。


「今のだけで結構レベル上がったかな?」


『プル!(僕もレベル上がったかも!)』


 あのレベルの敵を五体も倒すと、さすがのミナモもレベルが上がるようだ。


『非常に鮮やかなお手並みでした、旦那様……少し乱暴に使われるのも良いもので御座いました///』


 昨日の晩から少し様子がおかしいようだ。我慢していた時間が長かったから、少し発散させてあげた方がいいんだろうか?


「……レベルの確認は後にして、とりあえず今は数をこなすよ!」


 内心チラリと浮かんだ思考を払拭するように、次の獲物を求めて走り出す。


 昨日と同じオオカブトを見つけ、ツナミを一突きして靄にする。

 するとまたしても魔力が凝縮して魔石が生成されたのだ。


「なんか昨日のオオカブトの魔石より大きいか?」


『昨日よりダンジョンの奥に進んでいるからでしょう。モンスターはダンジョンの防衛機能で御座いますから、奥地に進めば進むほどより強くなるので御座います』


 一撃で倒せたからそこまで強くなったと感じることはなかったが、進んでいけば行くほど敵も着実に強くなっていくんだろう。

 レベル上げは最後に確認すればいいだろう。今は1つでも多く数をこなそう。


「一週間ダンジョン攻略チャレンジ行ってみようかな?」


『私が作ったあのダンジョンとは、ダンジョンの深度はけた違いで御座いますから、まず不可能でしょうけれど……あぁ、あれをすれば可能かもで御座いますねぇ?』


 ……あれってなんだろ?ちょっと嫌な予感がするんだけれど。


『それは今夜ゆっくりと……きっと旦那様のためになりますから♪』


 ツナミが今までしてきてくれた事が、俺の不利益になったことは一度もない。

 だから彼女のこの言は信用して良いだろう。


「それじゃあ楽しみにしておくね?」


『はい♪』


 ツナミと念話で話しながら、どんどんミナモとダンジョンを進んでいく。


 すると平原ばかりのエリアに、急に森の端のような木々が見え始めたのだった。


「急に雰囲気ガラッと変わるなぁ……今日はいったん此処までにしようか」


『まだ少し時間がありますが、よろしいので御座いますか?』


 森エリアにつくまでに、オオカブト級の魔石を6つも手に入れているので、今日もなかなかの収入になっただろう。


 ……それで買いたいものが出来たので、少し早めに今日はダンジョンから出ることにした。


「帰りに寄りたいところが出来たから、今日は早く帰るよ」


『かしこまりました旦那様』


『プル~!(は~い!)』

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