第11話
家族で晩御飯をとっていると、母さんからダンジョン実習の話を聞かれた。
「今日学校でダンジョン実習ってのがあったんでしょ~? ママも明日町内会のみんなとダンジョンに行くんだけど、どうだった?」
父さんも同じく会社でダンジョン実習があるらしく、前のめりになって話を聞く体勢になっていた。
「実習で向かったダンジョン自体が子供向けみたいなところだったから、危ないことは何も無かったよ」
フラワーダストは木製の武器の一振で倒せるくらい弱かった。野獣の高原でレベリングして改めて認識したが、あのダンジョンは異界の神が配慮して作ってくれたダンジョンだったんだろう。
父さんと母さんは、それぞれ会社と町内会とでダンジョン実習のようなものが開催されるらしい。
「しかし今日別のダンジョンに行ったんだろう?雄大……怪我はしなかったか?」
いつも冷静な父さんにしては珍しく不安げな顔をのぞかせている。
「……モンスターを倒すとさ、自分のステータスが見えるようになるんだ」
「ステータス?」
あまりファンタジー物の創作に触れない父さんにはイメージしづらいみたいだった。
「あれよね?レベルとかスキルとかが書いてある……」
母さんは少しだけ知っていたみたいで、両手の人差し指で四角を象っていた。
「そうそれ、そのステータスから職業っていう……例えば剣士とか魔法使いとか、選択できるんだ」
「なるほど、雄大はその職業というものについているから大丈夫だったと……」
俺が目立った怪我無くダンジョンから帰ってきた理由が分かり、納得した表情を見せる父さん。
「じゃあ雄ちゃんは、何の職業にしたの?」
この話題を機に、ツナミとミナモのことを切り出そうかと考えていると、母さんがすごくいいパスを出してくれた。
「俺はテイマーって言う……魔物と仲良くなって、一緒に戦ってもらう職業だよ」
「魔物っていうのはダンジョンのか?」
父さんと母さんからしたら、魔物とモンスターの違いが分からないだろうから、何か誤解されないようにしっかりと説明しないと……。
「魔物っていうのは昨日の会見で言ってた異世界からの避難民たちのことだよ。ダンジョンに出てくるのはモンスターっていって全くの別物なんだって」
理解を示してくれたところで、彼女たちのことを打ち明ける。
「今日も一緒にダンジョン探索をしてくれたんだけど……晩御飯の後、紹介してもいい?」
「あぁ、これからも雄大がお世話になるんだ。むしろ是非会わせてくれ」
それからも家族で会話をしながら夕飯の時間を過ごした。
みんなで手を合わせて挨拶をして、俺はすぐさま自分の部屋に二人を呼びに行く。
「話は聞いてたと思うんだけど、今から二人には両親に挨拶をしてもらいます」
「旦那様……ありがとう御座います」
『プル!(主のパパとママ僕を見てびっくりしないかな~?)』
少し目を潤ませているツナミと、頭の上で体をプルプルと揺らしているミナモ。
「大丈夫、父さんはともかく母さんも俺と同じかわいい物好きだから」
『プルル!(僕かわいい?)』
「あぁ、とっても」
嬉しそうに縦に揺れるミナモを頭に感じながら、ツナミと腕を組んで一階に降りる。
「腕組む必要あるの?」
「ご挨拶するのですから、睦まじい姿をアピールしませんと!」
ツナミの柔らかさを感じながら、増した緊張感を誤魔化すように速足で階段を降りようとしたら、しっかりとツナミに止められてしまった。
「落ちてはいけませんから、階段はゆっくり降りましょうね?」
……ツナミの言い分は尤もだったので、何も言い返せなかった。
心を落ち着けて、リビングの扉に手をかける。
「父さん母さん、紹介するね。 頭の上のスライムがミナモで、俺に抱き着いてる女性がツナミ……俺のこといっぱい支えてくれてる大事な人達だよ」
父さんは驚愕に目を見開いて、母さんはとてもうれしそうな表情で目をキラキラさせている。
「あらあら、ミナモちゃんもツナミちゃんもかわいいわね~」
「初めましてお義父様お義母様、ツナミで御座います。 よろしくお願いします!」
気を入れて深くお辞儀したツナミが顔を上げると、その目の前にはミナモを抱きしめている母さんが迫っていた。
「本当に美人さんね~……それで雄ちゃんとはどこまで行く予定なのかしら?」
「どこまででもで御座います!」
その後も、主に母さんとツナミの二人が盛り上がっていた。
両親との顔合わせが終わった後、お風呂に入って就寝の準備を終わらせた俺たちは、ベッドの上で向かい合っていた。
「明日からも放課後はおんなじダンジョンでレベル上げでいいんだよな?」
「そうで御座いますね……徒歩で向かえるダンジョンで一番効率がいいのは、野獣の高原で御座いますから」
一週間のレベル上げ、今日は一時間だけしかダンジョン探索を行えていないが、それだけでも大きくレベルが上がったのだ。
この上がったレベルであれば、明日はさらに効率が上がるだろう。楽しみだ。
「じゃあ今日は早く寝ようか……お休みミナモ、ツナミ」
同じベッドで寝ると言って聞かないツナミと、ミナモと一緒に布団をかぶる。
「お休みなさいませ、旦那様」
「変なことしないでよ?」
「……十年も我慢したので御座います。少しは良いでは御座いませんか」
ぴたりとくっついて首元に顔をうずめてくるツナミ。……ミナモがお腹の上に乗ってすぴすぴいっているので寝返りが打てないのだが。
「……まぁそれもそっか」
小さく笑みを浮かべて、俺は目をつぶった。
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