第12話 壊れた者同士

「ねえねえ、今日奈々子ちゃん家泊まっていい?」


「なんで!?」


 正体がバレて堂々とし始めた『ストーカー梨奈ちゃん』は、私の右腕に左腕を絡ませながら言ってきた。


 吹っ切れすぎでしょ。


「だって泊まりたいんだもん」


「おっふ」


 今の聞きました? 「もん」って。


 可愛すぎでしょ。


 即頷きそうになったわ。


 危ない危ない。


 チョロイ女になっちゃうところだった。


「いいでしょ?」


「いやいやいや、今部屋汚い――」


「これまで散々見てきたから大丈夫だよっ」


 さらっととんでもないことを言う。


 リビングに封筒が置いてあったのは数回だったけど、もしや梨奈ちゃん。


 私が気づいている以上に、家に侵入してるな?


「はぁ……」


 頭を抱えるしかない。


「怒った?」


 顔を覗き込まれました。


 可愛いですね、今日も。


「怒ってないよ」


 怒れるわけないじゃん。


 もうね、私も吹っ切れてるんですよ。


 頭がおかしくなっちゃってるんですよ。


 察してください。


「良かった! 流石奈々子ちゃん、大好き、愛してるっ」


 隣でピョンピョン飛び跳ねる推しを見ながら思いました。


 うん、やっぱり私の推しが世界で一番可愛い。

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