第3話 私の梨奈ちゃん

「奈々子ちゃん、今日も来てくれてありがとう!」


「梨奈ちゃああああん」


 はぁ、推しが今日も可愛い。


 尊い。


 加入してから約6年間貫いているツインテール。


 18歳になってもツインテールが似合うってどういうこと?


 私だったら絶対に似合わない。


 昔から「大人びた顔だね」って言われてきたから、何歳だって似合わなかっただろうけど。


 したいとも思わない。


 推しがしてるからいいんですよ!


「奈々子ちゃん?」


「はっ」


 優しく推しが手を握ってくれているというのに、思考が彼方へぶっ飛んでました。


 申し訳ない。


 時間は限られている。


 目の前の愛おしい推しに集中しないと。


「最近毎回来てくれて嬉しいよ」


 あぁ……梨奈ちゃんが笑ってる。


 尊い。


「うん、暇だから」


「仕事辞めたんだもんねえ」


 微笑む梨奈ちゃん。


 マジ女神。


 他の人に笑って「仕事を辞めたから暇」って言われたらヘコむけど、梨奈ちゃんだからなんとも思わない。


「そうそう」


「ちょっとの間は働かないの?」


「うん、今年いっぱいはゆっくりしようと思う」


 むしろ、私が仕事を辞めたことを覚えていてくれるなんて……。


 嬉しすぎる!


 もうね、どんどん個人情報話しちゃう。


「そっか。じゃあ今年はいっぱい会えるね!」


「うん!」


 ぱあっと星が輝くように素敵な笑顔を見せてくれる梨奈ちゃん。


 貴女のためなら借金をしてでも会いに来ます。


「はい、お時間です」


 おーん。


 何十回も握手会に来てるけど、時間が短すぎるっ。


「またねー奈々子ちゃん!」


「まっ、またね!」


 眩しいアイドルスマイルを浮かべながら手を振る彼女に言葉をかけながら、私はもう一度列に並び直すのでした。


 今日も今日とて推し活最高!

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