第6話 言霊ラップ発動!~VSギガント・ゴーレム

ゴーレムが挑発に乗る。

「モガアアアアァァァァァァァァァァ!!!!!」


全身から蒸気を四散させて、僕へと軌道を変えた。


僕は詩を放ち始める。

〽「【韻吐露イントロ】://

そこの頭空っぽの独活うど大木たいぼく

倍速 で埋葬 してやんよ 教えてやる敗北」


ゴーレムが一瞬ひるんだ。

「ンガッ!?」


今、僕の手から波動のようなものが出たような………?


すかさず、次の韻詩ヴァースを繰り出す。


〽「物故ブッコわしてやる、お前だ、ゴーレム

僕の言葉はさながら慈悲のない降雪

足元見ろ、氷結

全身から漏血ろうけつ

ここで食い止めるお前の猖獗しょうけつ


僕は目の前で繰り広げられる鮮やかな魔法に自ら目を奪われそうになった。


言葉と連動し、ゴーレムの目前に大吹雪が発生し、足元から次第に凍り始めている。

そして、ゴーレムを動かしているエネルギー源とされる「魔血まけつ」が全身から吹き出し始めていた。


「ヴヴヴン!シュゴーッ!シュゴゴゴゴゴゴゴッ!」

ゴーレムが悶え始める。


しかし、僕の魂はトドメを刺すまでコイツをゆるさないという、揺るがない闘争の意思を見せた。


そして、僕は韻詩ヴァースを撃ち続けた。

〽「お前の最期オーラス

まで言のことのはで凍らす

聴こえるだろ 亡者 の合唱コーラス


お前の限界を超過す ると

その四肢しし崩落ほうらく

獅子吼ししくで恫喝


長躯を凌駕

抜く爪牙そうが

ここが殺害現場ロウカス

脳天に一直線 飛ばす香車きょうしゃ


言霊を量産

そして乗算

足元の砂を噛め、死合終了ゲームオーバー


ゴーレムの額に鋭利な軌道が走り、そこに書かれていた古代文字のようなものを削り取った。


「モボオオオオオォォォォォォオオオォォォォオオオォォォオオオ!!!!!!!!」


断末魔の叫びとともに、その巨大な身体は瓦礫ガレキが崩れるように陥落していった。


や…


やっつけた…


「がはぁっ!」


僕はその場に片膝をついた。

一瞬視界が真っ白になりかけ、よろめいたのだ。



父さんが駆け寄ってきた。

「アストラ…、だ、大丈夫か…!」


「父さん…僕、何が何だか………」


そこへ、王様の怒号が聞こえた。

「その詩人の息子をひっ捕らえよ!その者が魔物を召還したに違いない!!」


僕は耳を疑った。

父さんが急いで僕を立たせた。

そして、肩を掴んで、言った。


「逃げなさい!」


「父さん…!」


「私にはわかっている。あれはお前が呼んだのではないということを。


そして、私はたった今確信した。お前はこの世を導く者だと。お前にしかできないことをやれ。行け!」


それは、いつもの死んだような目の父さんではなかった。

その目は活力がみなぎり、涙ぐんでいるようにも見えた。

僕は生まれて初めて父さんの迫力に気圧けおされた。


「お前には何一つ父親らしいことをしてやれなかったな。だが、詩の師としてこれだけは言える。お前は私を超えた。自分を、自分を信じろ…!」


僕の、一歩一歩の後退あとずさりが、気づくと全速力の疾走となっていった。


さっきまで腰を抜かしていたような衛兵たちが追ってくる。

「ひっ捕らえろ!」


父さん…!

もしかしたら捕らわれて、拷問を受けたりするかもしれない。

きっと戻ってくるからね…!


さっきの踏韻とういんの魔法、魔物への攻撃以外にも使えるだろうか…!


イチかバチかだ!


僕は王城の3階から身を乗り出した。


〽「これは非行 じゃなくて空中飛行

希望 に満ちた道 空に揮毫きごう


言霊が具現化する!

僕は空中を駆け下るように走った。


追手は目の前のことを信じられないというように愕然としている。


「何をしている!早く追わんか!!」

王様の喝破する声にはっとし、衛兵たちは追跡を再開した。


僕は無我夢中で王城の敷地から脱出するため走り出した。

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