第20話
「被告人、落ち着きましたか? 罪を認めますね?」
裁判長が冷静に尋ねる。
「うぐ...は、はい...み、認めます...」
官吏に押さえ付けられたデュランは致し方無しといった感じで苦し気に頷いた。
「よろしい。では被告人には慰謝料の支払いを命じます。次に子供の養育費に関してですが」
「さ、裁判長! ま、待って下さい!」
デュランはまだ悪足掻きするようだ。
「なんですか?」
「ステファニーは僕の娘です! それなのに赤の他人のサリアが親権を主張し、あまつさえ養育費を要求するなんて筋が通らないと思います!」
デュランは必死だった。慰謝料すら払うアテが無いというのに、その上子供の養育費までなんて到底払える訳が無い。
だからもし、サリアが本当にステファニーの親権を望むというなら、慰謝料と相殺する形で親権を渡すことは出来ないものか? そうなれば慰謝料を払わなくて済む。なんて虫の良いことを考えていたりした。
ステファニーの親権が役に立つなら安いものだ。元々デュランには子供に対する愛情なんて欠片もなかった。寧ろ五月蝿いのが居なくなって清々してるくらいなのだ。
「裁判長、もう一人証人を呼んでも構わないでしょうか?」
するとまたしても原告席から立ち上がったサリアが冷静にそう言った。
「許可します」
次に現れたのはアイラだった。またもやデュランは目を剥いた。
「アイラさん、被告人はステファニーが自分の子供だと主張していますが、それは果たして正しいでしょうか?」
今度はサリアが静かに問い掛けた。
「いいえ、可能性が高いというだけで断言は出来ないと思います...」
「ぬなあっ!?」
デュランが素っ頓狂な声を上げる。
「それはなぜですか?」
「ステファニーを妊娠した時、私は同時に三人の男と...その...お付き合いしてましたので...その内の誰かの子供だとは思いますが、それが誰かまではハッキリ分かりません...」
アイラは恥ずかしそうに途中で言葉を濁しながらそう告白した。
「アイラァ! 貴様ぁ! 僕を裏切っていたのかぁ! 許さん! 許さんぞぉ!」
デュランが再び暴れ出した。
「静粛に! 静粛に!」
裁判長が再び木槌を打ち鳴らし、デュランはついに官吏の手にによって雁字搦めに縛られてしまった。
「アイラさん、ステファニーが被告人の子供かどうかハッキリしない以上、現在親権を持っているのはあなたということになります。親権を主張されますか?」
裁判長の問い掛けにアイラは、
「いいえ、親権を放棄します」
そう答えたのだった。
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