第17話
「フゥ...危ない所だった...」
アイラはしばらく走ってから後ろを振り返り、デュランが追い掛けて来ないことを確認してスピードを緩めた。
「ったく、なんだってアイツが炊き出しの列に並んでんのよ...そこまで落ちぶれたって訳?」
自分のことは棚に上げてアイラは毒吐いた。
「走ったらお腹空いちゃったじゃん...」
アイラは地面に座り込みながらお腹の辺りを擦った。
「さて、これからどうしようかな...」
実はアイラ、無一文なのである。金が無くなったデュランを早々に見捨てて、昔の男の所に転がり込んだまでは良かったが、その男はアイラがデュランに貢がせ持ち出して来ていた金や宝石類に目が眩んだ。
アイラがちょっと目を離した隙に、男は金と宝石類と共に姿を消した。食事を摂る金さえ無いので、仕方なくアイラは炊き出しの列に並んでいたという訳だ。
「クソッ! あんのロクデナシめ! 今度会ったらタダじゃおかない! タマを引っこ抜いてぶっ潰してやる!」
その時だった。
剣呑なセリフを吐き捨て愚痴っていたアイラの周囲を、明らかに堅気とは思えない強面な男達が取り囲んだ。
「ちょ、ちょっと!? な、なんなのよアンタ達!?」
アイラは怯えながら問い掛けるが、男達は一言も喋らずアイラを担ぎ上げた。
「キャアッ! な、なにすんのよ! ムググ...」
口に猿轡を噛まされたアイラは、男達の手によってどこぞへと運ばれて行った。
◇◇◇
「お久し振りね。随分探したわよ?」
アイラが拉致られた場所は例の安ホテルだった。そこにはサリアが待ち構えていた。
「あ、アンタは!? ま、まさかこの連中はアンタの手駒ってことなの!?」
サリアの仕業ということに気付いたアイラが目を丸くする。
「えぇ、そうよ。探すのに苦労したわ」
「わ、私をこんな所に連れて来てどうするつもりよ!?」
「ちょっと確認しておきたいことがあるのよ。あの娘は、ステファニーは本当にデュランの娘なの?」
途端にアイラは黙り込んでしまった。ややあって重い口を開く。
「...それを聞いてどうするつもりよ?」
「どうもしないわ。言ったでしょう? 確認したいだけだって」
「...正直、私にも良く分かんないのよ...あの頃はアイツ以外にも何人かの男と遊んでたし...髪と瞳の色はアイツそっくりだけど...」
「そう、ありがとう。良く分かったわ。近々、デュランとの離婚訴訟の裁判があるの。今の話を証言してくれる? それまではこのホテルに缶詰めになって貰うけど謝礼は出すわ」
「えぇ、構わないわ」
アイラにとっては渡りに船だった。
「それともう一つ。あなた、ステファニーの親権を主張する気ある?」
「無いわ。子供なんて面倒なだけだもん」
「そう、良かったわ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます