第13話
デュランの愚痴は更に続く。
「クソッ! それにあの女もだ! なんなんだよあれ! 武闘派だなんて聞いて無いぞ! よくもこの僕を騙しやがったな! 今に見てろ! 裁判で目に物見せてやる!」
そもそもが最初っからサリアを利用するだけ利用してポイッと捨てる気満々だったから、サリア実家のこともサリア本人に対しても全く興味がなかった。だから知ろうともしなかった。つまりは完全なるデュランの自業自得である。
だがそういった自覚の無いデュランは自分のことを棚に上げ、自分を捨てた女達に対して散々毒を吐きながらただひたすら歩いていた。
もう少しで伯爵家の門に辿り着くといった所で、門が内側から開き馬車が出て来た。
「あ、あれは! お~い! フィリップ~!」
馬車に乗っていたのは弟のフィリップだった。昔から反りが合わなくて仲の悪い弟に頼るのは業腹であるが、背に腹は代えられない。デュランは大きく手を振って自分をアピールした。
「僕だ~! お前の兄のデュランだ~! 止まってくれ~! 話を聞いてくれ~!」
だがフィリップはチラッと一瞥したのみで、馬車を止めることもなく行ってしまった。その際、フィリップがまるで汚いゴミでも見るかのような視線をデュランに向けていたのだが、馬車を止めようと必死だったデュランは全く気付かなかった。
「クソッ! クソッ! だからアイツは好きになれないんだ! 昔っから嫌味なヤツだった! 勉強ばっかりしやがって面白味の欠片も無いヤツだった!」
ここでも自分のことを棚に上げている。学力で弟に負け続けたのは、一重に遊び回って努力して来なかった自分せいだったというのにその自覚が全く無い。
こんなヤツは伯爵に見限られて当然だろう。寧ろ今までが甘やかせ過ぎたのだとも言えよう。
「クソッ! クソッ! クソォ~! みんなして僕のことをバカにしやがって~! 覚えてろよ~! 今に見返してやるんだからな~」
デュランは全く根拠のない戯れ言を喚き散らしながら門に縋り付くが、当然ながら門は固く閉まったまま微動だにしない。
それでも他に行く当てのないデュランは、どんなに惨めであっても実家に縋り付く以外他に道は無い。
アイラのために用意したアパートはとっくに引き払ってしまっている。一縷の望みに賭けてアイラが勤めていた娼館にも行ってみたが、当然ながらとっくに辞めてしまっているアイラの姿はそこになかった。
「は、腹が減った...も、もうダメ...」
ついにデュランは門に背中を預けて座り込んでしまった。空腹と疲労でもう一歩も動けそうになかった。
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