第72話 アゲハ蝶
水面に映った真昼の月を
取りたくて手を伸ばして
もう少しで触れそうになったとき
目の前を横切ったアゲハ蝶
その羽模様がぐるぐると
頭に灼きついている
ぽつんと投げ込まれた石が
ゆるゆると波紋を広げて
やがて月ははじけて消えた
瞼の裏ではまだアゲハ蝶が
ふわふわふわふわ飛び回っている
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