エピローグ6

そして1週間が経過する。


――――クランネル王都。


王都事変の直後は、瓦礫がれきの街と化していた王都。


巨大な災害に見舞みまわれた後のような状態になっていたが、しかし現在は、だいぶ修復が進んでいる。


民家やアパートメントは建て直し……


砕けた石畳いしだたみは修理され……


折れた街路樹がいろじゅは撤去され……


以前の美しい王都の面影おもかげを取り戻しつつある。


しかしアレックスの残した爪跡つめあと甚大じんだいであり、完全とはいかない。


そして人々の心もまた、あの日から完全に立ち直れたわけでもなく、アレックスに対する怒りと憎しみは深く根付いている。





今日は、そんなアレックスの処刑の日だ。


―――――中央広場ちゅうおうひろば


私とアレックスが戦った場所。


まもなくここでアレックスの死刑がりおこなわれる。


中央広場の中心には処刑台しょけいだいが設置されている。


巨大なハルバードを持った処刑執行人しょけいしっこうにんが3人、処刑台のうえに立っている。


すでに広場には大勢の群衆が、処刑を見るために訪れていた。


人だかりであふれている。


「おお、ルチル様。いらっしゃいましたか」


そんな人だかりの中で、私を発見した人物がいた。


国につかえる大臣である。


「どうぞこちらへ」


と大臣は私を案内しはじめる。


処刑台の斜め前にはテラスが設置されていた。


そのテラスのうえには国の重鎮じゅうちんが座る座席が並んでいる。


処刑を観覧かんらんするための特等席とくとうせきだ。


重要な処刑がおこなわれる際には、こういった特等席が用意されることがある。


私は特等席に座った。


エドゥアルトとフランカは、私の斜めうしろに控える。


ちなみにリファリネスは連れてきていない。公爵領都こうしゃくりょうとでお留守番るすばんである。


―――――ちょうどそのとき。


広場の群衆がざわついた。


どうやらアレックスが現れたようだ。


ボロを着せられたアレックスが、処刑執行人に担がれながら、処刑台へと連れられている。


アレックスはジタバタと暴れ、処刑執行人に向かって怒鳴どならしている。


まあ、処刑に納得していないのだろう。


アレックスらしいな。


民衆たちが口々に言い合う。


「アレックス殿下が来たぞ!」


「やっと来たか、クズ王子が」


「俺の家をぶっ壊しやがって」


「あたしなんて息子を失ったのよ!!」


「死ね、アレックス!!」


「早く処刑しろ!」


ほとんどが憎しみの声だ。


ここに集まった民衆たちのほとんどは、王都市民おうとしみん


アレックスの引き起こした王都事変の被害者である。


住居を失った者もいる。


家族を失った者もいる。


自分自身が重傷や大怪我おおけがを負わされ、ひどい思いをした者もいる。


アレックスに対する怒りや憎しみは深い。






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