第8章349話:別視点2

ミジェラは混乱をますます極めていた。


第二騎士団と第三騎士団が壊滅的な状況に追い込まれるような魔物の襲撃。


なぜこのようなことが起こっている?


黒幕は誰だ?


そしてアレックスに何があった?


考えるべきこと、判断すべきことが多いのに、ろくに情報が集まらず、ミジェラはいらだつ。


さらに会議室にいた者たちが口々に叫ぶ。



「ご指示をください!」


王城勤おうじょうづとめの兵士も出したほうがいいのではないか」


「まずは陛下やクラウス殿下を安全な場所に避難させるべきだ!」


「我々も逃げねば」


「何を言ってる。ここは立ち向かって、アレックス殿下を止めるべきだろう!」



ミジェラは頭をかきむしりたくなった。


彼女は叫ぶ。


「ああ、うるさい! 少し黙れ。いま考え事をしているのだ!」


ここまでの非常時が起こることは滅多にないため、ミジェラの判断力は鈍くなっていた。


「何が起こっているのか、さっぱりわからんことが問題だ。とにかくまずは状況を整理したい。情報を集めてから、指示出しを―――――」


そのときだ。


空から何かが飛んできた。


樽である。


石材せきざいが詰められた重い樽が、ハリケーンによって舞い上げられ、空を飛んできたのだ。


樽はすさまじい勢いでバルコニーに飛来してくる。


そして。


「がっ!?」


樽は、ミジェラ女王に直撃した。


「母上!?」


「じょ、女王陛下ッ!!?」


「ご無事ですか!?」


クラウス殿下や、その場にいた者たちが悲鳴じみた声で叫ぶ。


樽が直撃したミジェラ女王は吹っ飛び、会議室のテーブルに激突した。


樽が破砕し、石材が散乱し、テーブルが壊れ、椅子が転倒して、辺りがぐちゃぐちゃになった。


しかし周囲の者たちが最も案じたのはもちろん、女王の安否である。



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