第2章46話:ユオー湖


森に囲まれた湖である。


中規模ぐらいの湖で、半径は50メートルぐらいだろうか。


エドゥアルトが言ってくる。


「ここが目的地の湖ですか」


「そう。ユオー湖ですわ。ここの湖底にスキル石が置かれているのです」


するとフランカが尋ねてきた。


「それも占い師の予言ですか?」


「そ、そうですわ。まったく占い師って凄いですわよね……!」


わざとらしく言い訳する私。


ついでに話題も変える。


「あと、人魚もいるらしいですわよ!」


「ええ!? 人魚が!?」


フランカが思いきり食いついた。


そして少し興奮したように続けた。


「私、人魚って見たことないんですよ。是非一度見てみたいと思ってました!」


「じゃあ、一緒にわたくしと泳ぎますか? 水泳スキルがあるなら、ですが」


「いえ、ありません……というかルチル様、これから泳ぐんですか?」


「そりゃあ、スキル石を取りにいくには泳ぐしかありませんからね」


泳いで取りにいく以外の方法が思いつかない。


本当はもっと安全に取得したいんだけどね。


私は言った。


「まあ水泳スキルがないなら辞めておいたほうがいいかもしれませんわね。湖のような淡水は、塩分が少ないため、浮力が保ちにくいですからね」


だから水泳スキルや潜水スキルをわざわざスキル石で取得したのだ。


スキルなしでも水泳ぐらいできるが、淡水を泳ぐとなると、スキルがあるに越したことはない。


するとフランカは感嘆したように言ってきた。


「ルチル様は本当に物知りですよね! いったいどこでそんな知識を覚えたのですか?」


「そ、それはっ!! 公爵家の英才教育、かなぁ! あはははは!」


冷や汗をかきながら笑う。


なんでもかんでも公爵家を持ち出したら、いずれボロが出るかもしれないが、致し方ない。


と、そこでエドゥアルトを見ると、顔をしかめていた。


彼は尋ねてきた。


「でも……泳ぐなんて大丈夫なのですか? 人魚が本当にいたとして、縄張りに侵入されたと思って、襲ってきたりしませんか?」


「あはは、大丈夫ですわよ」


と笑ってみせたが、実際は大丈夫ではない。


ゲーム通りなら、ここの人魚は襲ってくる。


正気を失った人魚が、湖の中を泳ぎ回っているのだ。


それをぶん殴って正気に戻すことで、イベントクリアとなり、スキル石が出現するという仕様だ。


「ではそっちの茂みで水泳服に着替えてきますので、しばらくお待ちくださいませ」


私はそう述べてから木々の茂みに行った。


そこで自作しておいたウェットスーツに着替える。


あと、水中で攻撃するための道具類をウェットスーツの腰に装着。


準備ができたら、湖の前に戻ってくる。


フランカが私の姿を見て、軽く驚いていた。


「み、見慣れない衣服ですね」


まあ、ウェットスーツは異世界では珍しい格好だね。


私は言った。


「よし、ではいってきますわ」


「いってらっしゃいませ」


「お気をつけて」


フランカとエドゥアルトの声を背中に、私は湖の中に入っていった。

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