第2章35話:二人の護衛


<ルチル視点>


冒険当日。


10月14日。


朝。


快晴。


私は屋敷の前で、護衛の二人と出会った。


男女一人ずつだ。


どちらも、今回の旅に際して、父上が新しく雇った護衛。


もちろん初対面である。


しかし私は、この二人に見覚えがあった。


(フランカと、エドゥアルト?)


なんと、どちらもゲームの登場人物である。


……フランカは、まさしく公爵令嬢ルチルの取り巻きをしていた女剣士。


適性職はたしか【魔戦士】。


軍の家に生まれた子爵令嬢だ。


なお現時点では、私と同じ114歳である。


……一方、エドゥアルトは騎士。


適性職は【大剣術家】。


眼鏡をかけた細身の男であり、若くして騎士になった秀才だ。


実力的には騎士団長レベルだとも噂されている。


私よりも7歳ほど年上だったはずだ。


つまり121歳。


「は、初めましてルチル様。フランカ・ビシュケースと申します。本日はよろしくお願いします!」


緊張したような声音でフランカが自己紹介をする。


続いてエドゥアルトが言った。


「お初にお目にかかります。エドゥアルト・リオネールです。このたびは、ルチル様の護衛を任じられまして光栄です」


こちらも、少し緊張気味ではあったが、フランカよりは手馴れたものだ。


要人警護の経験がそれなりにあるのだろう。


『この二人が護衛ね……ふーん、まあ悪くない使い手なんじゃないの?』


隣に立ったシエラ様が念話で話しかけてくる。


シエラ様と私は契約関係にあるので、こうして思念で会話することが可能だ。


ちなみにシエラ様の姿は、私以外の人間には見えていない。


不可視のスキルを使っているそうだ。


『というか本当に旅についてくるんですか、シエラ様?』


私が念話で尋ねる。


『そのつもりだけど、問題があるかしら?』


そう。


彼女は今回の旅に不可視のスキルを使いながら同行することになった。


理由は……


『何かあったときに、あたしがそばにいないと助けられないでしょ?』


とのことである。


まあ、精霊が見守ってくれるというなら安心度が高いのは間違いない……か。


そう考え、私はフランカたちに挨拶を返した。


「二人とも、よろしくお願いしますわね。それでは、出発いたしましょうか」


そして歩き出す。


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