第1章27話:魔法の性能テスト

翌日。


昼。


晴れ。


島のアトリエ。


私は鑑定魔法と収納魔法の性能をテストした。


まずは【鑑定魔法】。


対象物の情報を読み取る魔法。


人間、魔物、物体、液体、気体……


どんな対象でも、だいたい鑑定することができる。


自分自身も鑑定可能だ。


そして錬金術においても、この鑑定能力は凄まじく重宝する。


なぜなら、作りたいアイテムの必要素材も鑑定でわかるからだ。


たとえば土魔法の威力を高める『大地の指輪』を創りたければ……



大地の指輪・必要素材・鑑定!



……と頭の中で唱えればいい。


そうすると必要素材を把握できるわけだ。


錬金術には必須の能力と言えるだろう。






次に、【収納魔法】。


異空間にアイテムを収納してくれる魔法。


生き物以外はなんでも放り込むことができる。


収納したアイテムは、時間が停止するので、食べ物を収納しても腐らない。


ちなみに容量無限である。







(鑑定魔法も収納魔法も、チートなスキルだと思うけど……不満点もあるんだよね)


自室のベッドに腰掛けながら、私は思った。


鑑定魔法は、鑑定時、頭の中に直接情報が入ってくるのだ。


まるで情報を叩き込まれるような感覚のため、情報量が多いと頭がくらくらしてしまう。


収納魔法も、容量無限なのは便利だが、何を収納したのかわからなくなるのが難点だ。


収納したアイテムをリスト化できればありがたいのだけど……。


以上の問題点を私はシエラ様に相談してみる。


「……という不満があるのですが、何か良い解決方法はないですかしら?」


するとシエラ様は嘆息した。


「ないわよ。というか、ぜいたく言い過ぎでしょ」


そう叱責しっせきしてきた。


たしかに鑑定魔法も収納魔法も、十分に便利だ。


希少な魔法だし、使えるだけでもありがたい。


これ以上を求めるのがぜいたくなのは、その通りだろう。


しかし。


(私は……科学の徒。最上さいじょうの利便性を求めるのは性分しょうぶんですわ)


そんな思いが胸を占めた。


というわけで。


(私が思う鑑定魔法と収納魔法に作りかえられないかしら?)


私がイメージする鑑定。


私がイメージする収納。


そのイメージに魔法を修正できないだろうか?


実は、魔法というものは、少しだけならカスタマイズが可能である。


自分の使いやすいように。


自分の意図に沿うように。


なので、私も、この二つの魔法を、自分の思い描くスタイルに作り変えることにした。


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