第四章 衣食住、服を着てオシャレをします

第30話 王子、体がバキバキです

 あれから生活は一気に楽になった。畑では野菜を育てて、沼では虫を繁殖させている。水はアースドラゴンに地面を掘ってもらったら水が出てきた。


 その水を溜めて小さな池を作ったところにリザードマンが住んでいる。なんか普通の水と違って、少し臭いがするらしい。


 当の本人は温かくて住みやすいと言っていた。


 ちゃんと飲み水に関しては、別に管理しているため問題ない。


『アドル、トマトンが収穫できたぞ!』

『こっちはメロロンが採れたぞ!』


 相変わらずコボスケとヒツジは張り合っている。野菜も種がないから困っていたが、そのまま植えたらぐんぐん大きくなって野菜が実った。


 種がないのにどうやってできているのか探るために、とりあえず埋めてできた方法だ。


 それにアースドラゴンが定期的に畑の近くを歩いているからか、成長スピードが明らかにおかしい。


 島の謎はどんどんと深まるばかりだ。


 そんな中、そろそろ限界なことがあった。


「あー、体が痛いわ」


 そのまま床に寝ているためか体が痛い。骨が軋むってこういうことを言うのだろうか。動くたびにパキパキと音が鳴っている気がする。


 いくらささみがもふもふしていても、床で寝たことがなかった僕には数日で限界が来てしまう。


『それは拙者が――』


『ワシが作るからお前はいらないぞ』


『ヌー!』


 隣でジタバタとしているコボスケを横に、ベッドの作図を書いていく。しっかりわかりやすく書いたから伝わるだろう。


『えーっと……これは何の絵だ?』


 地面に木でベッドの絵を書けば伝わると思っていた。だが、僕の絵には才能がなくて伝わらなかった。


 昔から絵の才能がないことは知っている。


 よく新しくて斬新と言われていたが、あれは王族だから気を使った褒め言葉なんだろう。


 とりあえず寝れるように環境が整えば問題はない。


 あとは、テーブルや小さな棚があれば良いだろう。


 今まで串焼きか果物や直接野菜を食べてきたが、そろそろお皿を用意してもいいだろう。


 コップもないため、水も直接口をつけて飲んでいる。


 すごく野生的なこの姿を家族が見たら、絶対に怒られるだろう。

 

 当面の間は家具作りが中心になる。


 あとは、問題のベッド関係だ。


 ささみが思ったよりも羽が抜けることがないため、ベッドの布団に使うものがないのだ。


 葉っぱでは直接当たる部分が痛いし、寝返りがしづらいのが問題だ。


 下のマットレスに関してはリザードマンから虫をたくさん引いた上に寝たらどうだとアドバイスをもらった。


 いくらプニプニだからと言って、寝返りしたタイミングで潰れたり、足の方が上になった時には発狂するだろう。


 顔の横で足がカサカサとしているところを考えると、夜も安心して寝れないだろう。


「コボスケとささみは手が空いている?」


 声をかけるとやることがなかったのか集まってきた。ささみがヨタヨタと歩いている姿を見ると、ついつい微笑んでしまう。


『アドルどうしたんだ?』


「ささみの親に会いに行こうと思うんだけど、一緒に来てくれないかと思ってね?」


 今回はフェニックスから抜けた羽をもらえないかと交渉するつもりだ。あとは、ささみが大きくなったところを見てもらう。


 向こうにもささみの兄弟がいるため、見比べてうちの子が太りすぎではないかの確認をするためだ。


 僕達はコボスケに案内されるがまま付いていくことにした。


 そういえば、ささみと一緒に森の中を歩いて移動するのは初めてだな。


 この日はささみの初めてのお散歩の日にしようか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る