[十五年前]
春の夜。
そのような家で狙われるものである以上、当然ながらただの宝石ではない。
「夜の
人が死なぬ程度の騒動を好む魔石はその夜、二人の盗人をその館に招いた。
一人は怪盗。
予告状を出し、厳重な警備をさせた上で目的のものを盗み出す彼は、その石の美しさに魅せられていた。
一人は魔術師。
協会の中で孤独と孤高にもがいていた彼は、その石に惑わされていた。
宝石争奪戦の勝者となったのは魔術師であった。彼はいくつもの混乱が折り重なる中でその宝石を盗み出した。盗み出し、元身内の不祥事をすすぐべく協会が派遣した追手との交戦し――結果、死を迎えた。
「『夜の灯火』は騒動を好む。だが、人の死は招かない」
以上の伝承を証明するように、彼の遺体から宝石は見つからなかった。隠れ家からも見つからなかった。どこかに隠したことは間違いない。だが、それを探すには東京は広すぎた。
「夜の灯火」は行方不明となった。
二条家は宝石を失った。
怪盗はその目的を果たすことができなかった。
魔術師は命を失った。
協会は顔に塗られた泥を落としきることができなかった。
以上が十五年前の事件の簡単なまとめである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます