第8回 頭に「く」のつく映画といえば?
小さい頃は、漠然と見ていた大人が、実はすごい人だった、って後で知ることがあります。
私にとって、リアルに中学生だった時に観た「ぼくらの七日間戦争」(1988年)という映画の中で、主人公たち中学生の前に立ちはだかる体育の先生がすごく怖く感じたんですけど、後になって、この体育の先生を演じたのは倉田保昭さんという方で、アクション俳優界の大御所なのだと知りました。
調べていくと、日本だけではなく中国などのカンフー映画にも出演されていて、ブルース・リーがヌンチャクを使うようになったのは、倉田氏がプレゼントしたのがきっかけなのだとか。
倉田氏は「和製ドラゴン」とも呼ばれ、1974年の日本のドラマ「闘え!ドラゴン」で主演もされていて、そのキレの良いアクションを見せています。
と、前置きが長くなりましたが、自分の中では「倉田保昭・最強伝説」をさらに確固たるものにした、頭に「く」のつくアクション映画、「クローサー」を紹介します。
2002年の香港・アメリカ合作映画。監督はコーリー・ユン、出演はスー・チー、ヴィッキー・チャオ、カレン・モク、ソン・スンホン、マイケル・ワイ、ベン・ラム、倉田保昭ほか。原題は「夕陽天使」です。
(2004年のアメリカ映画で、まったく同名の「クローサー」という作品もあるので、要注意!)
あらすじはこちら。
美人姉妹のリンとクワンの2人は、亡き父が遺してくれた衛星通信システム「ワールドパノラマ」を利用し、セキュリティを無効化、どんな強固な警備のビルでも潜入して暗殺依頼を遂行する殺し屋の姉妹。
その名も「電脳天使(コンピュータ・エンジェル)」。
その日も、依頼通りに企業の社長暗殺をサクッとこなした帰り道、リンはケーキ屋の前で、昔なじみの青年ティンヤンと偶然にも再会します。
爽やかイケメンのティンヤンとは、リンが女子大生だった頃、旅行先で知り合った仲。
そんなイケメンとの再会に心が躍るリン。
今の職業が「殺し屋」だと言えるはずもなく、彼と距離を置こうとします。
ですが、彼の熱い想いはプロポーズとなり、リンは殺し屋稼業を引退し、彼の求婚を受け入れることを決意します。
妹のクワンは、姉の婚約を“表向き”は祝福しましたが、内心では不安です。ふたりでやってきたチームワークの「電脳天使」、これからひとりでやっていけるのか?
リンは「あなたは一人じゃできないに決まってる。依頼が来たら断りなさい」とアドバイスします。
未熟なクワンの身を案じての発言でしたが、この言葉が、クワンの心に火をつけ「ひとりだってできるもん!」とムキになって、新たに来た暗殺依頼を自分だけで受けてしまいます。
一方、殺人事件の捜査を開始したアメリカ帰りの女性刑事・コンは、小さな証拠から「電脳天使」に迫って行きます。
ついにはクワンと接近するまでになりましたが、クワンの失敗をうまくリンがカバーして、捕まえることはできずに逃がしてしまいました。
しかし、事件の裏側に別の黒幕がいることに気付きます。
冒頭で「電脳天使」が実行した社長殺しは、実は社長の弟が依頼主であり、跡目争いで兄を殺して社長の座を奪うためでした。
どうでもいい話ですが、この弟の名前は「チョウ・ナン」であり、「弟なのにチョウナン(長男)なのか」……とか思っちゃいました。変なこと言ってすみません。
弟は、自分が社長暗殺の黒幕だという真相に気付いたコン刑事と、事実を知る「電脳天使」の両方を抹殺する方法を思いつきます。
凄腕のコンピュータの専門家を雇い、ワールドパノラマの通信を逆探知して「電脳天使」の自宅住所を暴き、襲撃したのです。今回、クワンがひとりで受けた依頼というのも、その通信を辿るためのダミー依頼でした。
多勢に無勢、多人数での襲撃で、哀れにも銃弾を受けて、絶命してしまうリン。
そして、捏造された証拠により、リン殺害の容疑はコン刑事にかかり、コン刑事は逮捕されてしまいます。
コン刑事を警察から救い、逃がしたのはクワンでした。
姉のリンの仇を取るため、協力してほしいと頼みます。
自宅襲撃時の監視カメラ映像データが残っており、それを提出すれば、コン刑事の容疑も晴れるはず、と証拠を使って取引を持ちかけてきたのです。
殺された姉の復讐を果たしたいクワン。
自らの立場が危うい中、義憤に燃えるコン刑事。
こうして、敵同士だった殺し屋と女刑事がタッグを組んで、真の黒幕に立ち向かう!という少年漫画のような熱い展開を見せるアクション映画です。
香港映画おなじみのワイヤーアクション、そして脚の長い美女たちの繰り出す美しい蹴り技の数々! 脚の綺麗な女性は良い!
倉田保昭氏は、クライマックスでビルに侵入したクワンとコン刑事の前に、敵として登場するのですが、これがまた強い!
舞台は庭園が見える和室、武器は日本刀。
女性二人の同時襲撃も刀一本で防ぎ切り、畳の上でスッと構える姿は「この人には絶対に敵わない!」と戦意を喪失してしまいそうになるほど、殺伐とした気迫に満ちています。
(そのシーンについて、倉田氏本人が解説する副音声もソフト盤には収録されています)
中盤、クワンとコンの「互いの実力を認めあっていながら、決して交わらない平行線」みたいな関係性、そこからの共闘。
大きな黒目がちの瞳のヴィッキー・チャオの美貌もあって、実に好きな作品です。
あとやっぱり脚が綺麗。(しつこい)
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