第3話 保健室の先生の魔法
「ここは?」
「頭痛や目眩はありますか?」
保健室で起きた僕はあの瞬間何があったかを悟った。熱した鉄に散りばめた髪の毛が爆発したのだ。
光を目に当てられたり色々チェックされていくが全く痛みなどはないし体に異常はない。
避難所でもしかしたら一番人気と思われる人物女性、竹内裕美先生だ。若くて真面目でとても優しくて、何処とは言わないが凄い大きい。
「脳へのダメージは本当に死に繋がるんですよ……今が良くても後がどうなるかわかりません。しばらく安静にしていてください」
「はい」
「ここでは、私では、何があっても処置すら出来ませんからね……それで何があったんですか?」
「えっと小野田ソードを作ろうとして髪の毛が爆発しまして」
「―――やはり脳に異常があるようですね」
「僕は正常です」
なんでも作業スペースからガンガンギュインギュインと音がするのはいつものことだが。流石に聞き慣れない爆発音があって人が集まったそうだ。おやっさんと小野田くんは手が離せないから僕を連れて行くように言ってくれて僕がここに担ぎ込まれたと。なるほど、おやっさん………。
先生は先生で脳へのダメージを心配していて真剣に見てくれている。先生に頭を抱えられて首を回し、痛む角度はあるか?なんて聞かれるが先生のおっぱいで幸せですとしか思考できない。
検査機器もない状態から調べるのに四苦八苦している真剣な先生を茶化すことは出来ないが………小野田くんナイスゥ!!
「すいません、先生の魔法は使えないのですか?」
「魔法?あぁこの力のことですね?」
手を持たれて金属片でほんの少し切った部分、そこに手を当てると一瞬むず痒い気もして……治してくれた。
「私の力はこの程度なんですよ。異能とか超能力とか色々言われてますが魔法ですか……魔法…………ふふっ、そんな歳じゃないんですけどね」
何だこの可愛い人は。こんな先生高校にいちゃいかんでしょう?!
「あらここも怪我してますね」
頬に手を当てられておでこをじっと見られた、鏡がないから分からないが軽く怪我しているのかもしれない。でもモテない自分には超美人さんの顔がキスできそうな距離にあるだけでドギマギしてしまうんです!!!
「動かないでください」
「ふぁい……」
「はい、治りましたよ!加賀さん?」
「ありがとう、ございます」
「いえ、それでは私は近くにいると思いますが何かあれば読んでくださいね」
とにかく頭部の怪我は危険ということなのでゆっくり寝るように言われた。頭痛や吐き気、異常を感じたら小さなことでも言うようにきつく言われて……心穏やかじゃないままに寝た。
久々にまともな布団だ、おやっさんと俺が寝起きしてる小屋にあるのは何枚かの座布団である。
夜、ふと起きると隣に小野田くんがいた。
「大丈夫すか?」
「うん、いやー、久々のベッドで熟睡したわ」
「えっ、いやその、ごめんなさい?」
後悔が顔から見て取れる。怪我させたり他人に大いに迷惑をかけるのはどうしようもないがあることだしな。
今回の場合は適当にアイデア考えて安全性も考えずに指示しなかった自分が悪いし、彼が謝ることなんてなにも無いがやはり気にしてしまうのだろう。
「いーって、よくあるからこんなの」
「いや、でも………」
「小野田くんの気持ちもわかるよ……謝ってくれてそれも正しいしとても偉いことだと思う。こうやって大人になっていくもんだからね。もう大丈夫だし気にしない気にしない」
「………」
言い方が悪かった、高校1年生と大学3年、離れてるのは5つぐらいかな?年とった人が諭すのがすごく上手い人はいるけど僕はまだそんなに人に思いを正しく伝えられる経験もない。
「そうだな、おやっさんの大成功な大失敗を教えてあげよう」
「大成功な失敗談?」
おやっさんの工場での失敗談。工場で火事の避難訓練があったとき、おやっさんの部署には通達がされていなくて、中で車椅子で作業していた別部署のことを見捨てずにシャッターを回避して窓を叩き割って突入、車椅子の作業員さんを担いで工場から飛び出してきたことがある。
本人は必死だし、人としてとても正しいことだがおやっさんはとても恥ずかしい思いをしたそうだ。
「で、その車椅子の人が今のおやっさんの奥さんっていうおち「――――ほう?面白そうな話ししてるみたいだな加賀」サーセンっしたっ!!!」
このあと超怒られた。
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