作者様の迷走が果てないので誰か助けて、ローラより
陽登 燈
第1話 私はローラ、
「私はローラ。10歳になってもう10年。
オーロラの色の髪をしているの。
だから、ローラ。
中世ヨーロッパ時代を舞台にした異世界転生モノの、主人公よ。
『神の手は私である』という頭のおかしな名前でラノベを書いている作者様、
『神野 半度』という、本名もまた頭のおかしい男の作者様が今日もラノベを書いている。
この世界、このラノベを。
とても頑張って書いてる。でも、絶望的にセンスが無くて。
今日も私は、こうして作者様に気づかれない様に、日記を、いえ、遺書を書いているの。
もう、30回は死んじゃった。
作者様がいつも血迷うから、私が死ぬ羽目になるの。
今日も、そう、作者様がラノベを書いている、必死に。
作者様が書くラノベの名前は、
【異世界を救う子】。
そして、私は、その主人公、ローラ!
中世を舞台に、世界の命運をかける戦いをしているの。
作者様、早く気づいて!その絶望的なセンスの無さに!神様どうかお願い!どうか、作品名だけでも、私の名前だけでも、、
!!」
ゴゴゴゴゴゴ!
という音だけが、ローラの今居る家に近づいてくる。
ローラは、文字通り飛び跳ねる。小さいその体が軽々と宙に浮き、お尻からストンと地面に落ちた。
「今日も、始まるのか。」
疲れた声で、ローラは吐露する。
そしてすぐに、ローラが今いる家のドアが、蹴破られる。
バリバリ、と
何の罪も無いドアが粉々に砕け散る。
「ヒイイ!」悲鳴をあげるローラ。
頭を抱えながら、近くの机の下に素早く、逃げるように飛び込んだ。
ローラは気づいていた。
ああ、作者様だ。
ドアノブがついているのに、わざわざ壊して入ってくるなんて。
この前、修理したばかりなのに。
束の間、ドアの有った入り口から、
大柄な男が家に侵入してきた。
そして叫んだ。「ローラ!!」
「ヒイイ!」ローラは叫んでしまった。
ローラは口を手で押さえながら、改めて声を殺す。
そして、机の下から少し顔を出して、
男の顔を覗き見る。
し、知らない人だ!
また唐突に現れた知らない人!
毎日毎日、何の前触れもなく、
知らない人を私の家に投入してくる作者様。
この、下手くそ!
普通、こんな所に住んでられないよ!
書かれる私達の身にもなってよ。
ローラはそう思いながら、
必死に小さく丸くなった。
どうか、痛いのはやめて。
ローラは祈っていた。
「ローラ!ローラ!ローラ!ローラ!」
突如、何者かの声が、家の外で、
辺り一体に響き渡っている。
「ローラ!ローラ!ローラ!ローラ!
ローラ!ローラ!ローラ!」
誰かが叫んでる。
きっとやまびこを表現したいんだろう、と、
ローラは察した。
やかましい声の主を拝まないと、
先に進まない。
ローラは、決心して、心を無へと沈めた。
そして、
この作者様の為に覚えた必殺技を繰り出す。
奥義「無動人形」!
この奥義は、
何が起きても、動じず、ミスを犯す事無く演技を行う事が出来る様になる、ローラの、
努力と血と涙の結晶。
ローラは、感情の起伏を内に追いやり、役柄を演じ出した。
作者は書き記した。
『家の外に出て、
ローラはガタガタと言った。
「あ、あれは、ロボット!」と。』
(ここ中世ヨーロッパ!ロボットなんて単語、初見で出せない筈でしょ!)
「あ゛、あ゛れ゛ば、ロ゛ボット゛」
(ガタガタと言うの、難しいです!
ガタガタと震えながら、では無くてですか、作者様!)
ローラは、役を演じながら、
外にある、それを見つめた。
そこには、山よりも大きな建造物、いや、ロボットが立っていた。
何だ、あれ、、
驚きで固まるローラ。
(うぁ、本当にロボットだ。)
作者は書き記した。
『そして、無情な指令が、ローラに下される。ロボットの地響き声によって。
「ロ゛ー゛ラ゛乗゛れ゛!」』と。
ロボットはガタガタと動き、地響きを起こしながら、地響きの音に合わせて言っていた。
(地響き声って何ですか、
地響きを起こしながらロボットさんは、
声を出してます。
【地響きの様な声】の間違いですか!)
作者は記した。
『ローラは言った。
「任せないさ!この異世界を救う子、ローラに!」』
「任せないさ!この異世界を救う子、ローラに!」
(誤字なんてもうへっちゃら!
え、これに乗るんですか汗
私、ちゃんと帰ってこれるのかな。)
ああ、私の作者様、今日も迷走過ぎるって。
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