いつから好きになっていたんだろう (番外編)

時は遡って、パブロが(16歳)絵理が(14歳)の頃。



パブロは少し前から、絵理の事が気になっていた。

最初は、ずっとケンカばかりして、言い合いにもなったりしていたが、一緒に過ごしていくうちに、居心地の良さだったり、素直な自分でいられたりすることに気がついた。

好きかもしれないと意識しだしたとたん、絵理を見ればドキッとするようになった。



…とある日の谷川家。


「パブロー」

絵理がパブロを呼ぶ。

「え!?何?!」

パブロは呼ばれてドキッとした。

「…声でか…」

「うるさいっ。何だよ」

「孝司は?」

孝司(5歳)は絵理の弟だ。

「知らない。いないの?」

「うーん。見当たらなくて、トイレかなぁ」絵理はトイレの方に行った。

「絵理、いたー?」

「いなーい」

「どこだろ。外かな…」

パブロは立ち上がって玄関に行った。

孝司の靴が無いことに気がついた。

「絵理ー!孝司の靴が無ーい」

「えー!じゃ、外?」

パブロは一足先に外に出た。

「いない…」

家の周りには、孝司はいなかった。


「パブロっ。いた?」

絵理も慌てて出てきた。

「いない…」

「え!…公園かな…」

絵理は不安で押しつぶされそうな顔をしていた。

「もう、暗くなる…。早く探さなきゃ…」

絵理は走り出そうとした。

「絵理」

パブロの呼びかけは、絵理の耳には届いていなかった。

パブロは走り出した絵理の腕を掴んだ。

「何?!」

絵理はパニックになっていた。

「大丈夫」

「何が!」

「俺、分かるから」

「…何で…?」

絵理の目には涙が浮かんでいた。

「よく知ってる人の事は、魔法で探知できるから」

「!!」

絵理はパブロを叩いた。

「いてっ!」

「早く言ってよ…」

絵理の目から涙が溢れた。


パブロは集中し始めた。

「……なんだよ」

「え?」

パブロは走って家の裏に行き、物置の影を見た。

「あーあ、見つかっちゃった」

パブロと目が合った孝司は、笑って言った。


「バカ!」

パブロは怒った。

その声のあと、すぐに絵理が来た。

「孝司!」

「……」

孝司はパブロに怒られて気まずい顔をしていた。

「もう!何してんの?もう、心臓が…、爆発するかと思った…」

絵理は孝司の頭をポンと軽く叩いた。

「…別に隠れてただけだし」

「1人で勝手にかくれんぼ始めちゃダメ」「……」

「絵理、孝司いなくなって泣いてたぞ」「……」

「…だって。普通に隠れてたらすぐに見つかっちゃうから…」

「知らんけど…。絵理を泣かすような事はするな」

「……」

「いつも絵理を泣かそうとしてるのパブロ兄ちゃんのくせして…!」

「え?!」

「意地悪してるじゃん!」

「意地悪?」

「泣かそうとしてるじゃん」

「泣いてんの?」

パブロは絵理に確認した。

「いや、泣いてないけど…」

「そうだよね…」

孝司は悔しくなった。

「それは、絵理がパブロ兄ちゃんの事…」

「あー!!!!」

絵理は大きな声を出した。

「絵理うるさい」

孝司が、耳を塞ぐ素振りをした。

「あー、そういえば、パブロに意地悪されて、泣きそうになった…かも」

「え?」

「ほらっ」

「さっき泣いて無いって言ってた」

「あー…、言ったかな…。でもいつも我慢してた」

「言ってること違うじゃん」

パブロは必死で聞いた。

「さっきは…さっき。今、思い出した…のかも…」

絵理の言っていることが、支離滅裂になってきた。


「じゃ、何を言われて泣いたんだよ」

「今はいいでしょ。孝司見つかって安心したよ」 

「納得いかない」

(俺、そんな傷つけたか?)

その隙に、孝司はパッと走って家に入った。「孝司っ」

絵理も行こうとした。

パブロが絵理の腕を掴んだ。

「言えよ」

「忘れたっ」

「絵理っ」

パブロは、絵理の、顔が赤くなっているのに気がついた。

「今だよ…」

「え?」

「そんなに強く言われたら、今、泣きそう!」

絵理はさらに、顔が赤くなった。

「今?」

パブロは絵理の顔を覗きこんだ。

「もう、やだ!離して…」

「離さないって言ったら?」

絵理の顔はますます赤くなった。


(なんだよ…)


(可愛いくない?)


パブロは調子にのって、さらに覗きこんだら、足を蹴られて絵理は逃げて言った。


「痛ってぇ」

(なんだよ…)

パブロは、絵理が自分の事を意識しているとは、全然思っていなかった。



「孝司!さっき何言おうとしたの!?」

絵理は家に入って、孝司を問い詰めた。

「…何って?」

「私がパブロの事どうのこうのって…」

「絵理がパブロ兄ちゃんの事、許してるってこと…?」

「あっ…。あぁ…なんだ」

絵理はホッとして、孝司の前から去っていった。


(ふ~ん。好きなんだ…)


(両思いじゃん…)



孝司は5歳だが、実は、年の離れた兄姉の影響で、思考がかなり大人びていた。

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