特例中の特例
絵理とパブロは、手を繋いで向かいあって寝ていた。
電話が鳴った。
パブロが目を覚ます。
「…ん…。もしもし…」
「パブロ?レイだけど…。」
「…うん」
「…教授がさ、今日の10時に教授室に来るようにって…」
「ん。わかった」
「…大丈夫?」
「ん、ありがとう。大丈夫」
現在6時半。
パブロは寝てる絵理の顔を見る。
「もう会えないんだよな…」
絵理の体に覆いかぶさるようにして、キスをした。
「…ん…」
「相変わらず目覚め悪いな」
パブロは笑って、
「絵理」
と声をかけた。
「んー…。」
目の前にパブロが居るのが分かると、何も言わず首に手を回した。
パブロも絵理の背中に手を回して、横向きに倒れ込んだ。
「今日ね、9時半くらいに学校行ってくる」
「…うん…」
それ以上何も言わずに、強く抱きしめた。
「学校の前まで、一緒に行っていい?」
「うん…」
「じゃ、準備する…」
2人はしっかりと手を繋いで、大学まで行った。
「孝司大丈夫かな…」
「うん、俺が治したから、大丈夫!」
「ハハッ。そっか」
絵理は笑った。
「今回で、自分がとてつもなく優秀なことに気づいたよ」
「そうなんだ」
「そうなの」
パブロは笑った。
学校につくと、
「じゃ、どっかで待っててもらっていい?」
「うん」
「じゃ」
手を振りあった。
「失礼します」
パブロは、教授の部屋に入った。
中には、5人の教授が椅子に座って待っていた。
「今回はすいませんでした」
「今回の卒業試験は、不合格とする。」
「はい」
「人間界の病院に許可なく、瞬間移動したのに加え、許可なく手術をしたことも、許される事ではないと思う」
「はい」
「あの後、関係者の記憶の改竄をこちらでこちらでしなければならなかった」
「はい。すいませんでした」
「…あの男の子の体調がかなり回復したみたいで良かったですね」
別の教授が言った。
「え…ありがございます」
思ってもみない事を言われ、少し驚いた。
「昨夜、手術の様子を私達全員で見ました」
「…はい…」
「それを見て、その知識、技術、精神力の高さに驚きました」
「?…はい…」
「私達でも、あの手術を成功させるのは、容易ではないと思います」
「…ありがとうございます…」
「ここにいる全員で、協議した結果…。
もう一年、猶予を与えるという事にしました。」
「え…」
「その魔法力を、トップレベルの場所で使うことができないのは、惜しい」
「…」
「ただし、今回は特例中の特例なので、条件があります。」
「はい」
「今後の試験は、すべてトップ通過しか認めません」
「はい」
「成績が落ちた時点で、やはり不合格とします」
「はい」
「どうしますか?」
「ありがとうございます!お願いします!」
パブロの目は涙でいっぱいになった。
「失礼します」
ドアを閉めると、パブロは思わず
「やったー…」
と口に出してしまった。
絵理に電話して、待ち合わせ場所を決めた。
(まだ、一緒に、いられるかもしれない!)
パブロは走り出した。
「やったー!」
周りの人がびっくりして、パブロを見る。
パブロにとっては、その視線すら嬉しかった。
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