さよならのキスと、ただいまのキス

「あと、5日だね…」

「うん」

パブロと絵理は、手を繋いで歩いていた。

「また水族館行きたい」

「うん、明日。行こ。帰りに公園寄ってさ」

「うん」

「……」

「ん?」

パブロは、突然、絵理にキスをした。

「ちょっと。外でやめてよ」

絵理は、グーでパブロの肩を殴った。

「痛っ。何で?人いないよ」

「やだ…」

「…じゃ、家帰ってする?」

「……」

「帰ってする?」

「……」

絵理の顔は真っ赤だった。

「可愛い」

「もうっ、うるさい」

「帰ろ」

パブロは、絵理の手を引っ張って走った。

「早く行こっ」

「危ないよっ」

2人笑いながら走った。


パブロが魔法界に帰る前日。

パブロは絵理の部屋で、ピッタリくっついて座っていた。

「もう、明日から会えなくなるんだね」

「うん。寂しい?」

「寂しい…」

「可愛いね」

パブロは、絵理の顔をじっと見る。

「帰って来たらさ、絵理は16歳?俺が18歳?何か大人だね」

「パブロなんて成人だしね」

「ね」

「お互いどんな感じになってるのかな」

「んー。どうだろう…。でも、見た目は全然変わってそう。まだ成長期だから」

「そうだね」

「気持ちは変わらないでね。…ん?何か俺、うまいこと言った?」

「微妙…」

パブロは絵理を睨んだと思ったら、キスをした。

「もっとしたい…」

「うん…」


パブロが魔法の国に行く時が来た。

最後は、パブロと絵理、二人きりで別れを惜しんだ。

「あ、言い忘れてたけど、」

「?」

「高校の卒業試験、30位以内じゃないと、戻れないの」

「今、何位くらい?」

「108位」

「…」

「頑張るから!」

絵理は、とてつもない不安を覚えた。

「大丈夫!」

と言ってキスをして、魔法界に行ってしまった。




あれから、約2年がたった。

絵理は高校1年生。

パブロと別れてから、パブロが勉強頑張っているだろうからと、自分も勉強を頑張った。

おかげで、ランクの高い高校に入れた。

愛花と圭太とは、別の学校になった。

二人は相変わらず仲良しだ。


高校は私服なので、おしゃれな子が多い。

絵理も皆のマネをしながら、頑張っていた。

多少はキレイになったんじゃないかと、自分自身では思っている。


パブロは無事に高校を卒業したのだろうか。

絵理は、パブロがいつ戻ってくるか正確な日にちはわからないので、ずっとソワソワしていた。


「…あー、会いたいな…」

こんな感じで呟いたり。


「誰に?」

ちょっとふざけた声で、聞いてきたのは、あの"小林君"だ。

「湊か」

湊は同じ高校に通っている。

あれから、孝司と春乃の繋がりもあり、仲の良い友達になった。

「湊か…ってなんだよ」

不服そうに言って笑う。

「パブロ君、もうすぐ帰ってくるんだっけ?」

「うん、そのはずなんだけどねー」

「早く会えるといいね…」

「うん」

(意外といい人だよぁ…)



「ただいまー」

「あれ!?」

「ん?」

「会わなかった?!」

「誰に?」

「パブロ兄ちゃん!!帰って来たんだよ!!絵理まだ学校だって言ったら、走って探しに行ったんだけど」

「うそ」

絵理も駆けだして行った。


通学路も2人で行った水族館も公園も行ったが、見つからなかった。

「いない…」

家までトボトボ帰る事にした。

向こうから、同じくトボトボ帰る人がいた。

「え…」

「えー!!」

お互いに駆け寄った。

「どこにいたんだよ!」

「学校とか水族館とか…」

「俺も行ったよ…」

「うそ…」


「疲れたぁ」

「俺も」

2人は笑い合った。

絵理から、パブロに抱きついた。

「おかえり!」

パブロも抱きしめた。

「ただいま」


二人は外だった事に気づいて、パッと離れた。

「フッ、帰ろうか」

パブロが手を差し出した。

「うん」


2人が家に帰ったら、博之も和美も帰って来てて、入った瞬間、肩やら頭やらポンポンされて迎い入れてくれた。

皆すっごい笑顔で、涙目で。

パブロもつられて泣いた。


博之たちが、パブロと絵理を2人きりさせてくれた。

手を繋いで、ソファに座る。

「また皆に会えて嬉しい」

「うん、皆でずっと待ってたよ」

「嬉しいな…」

「勉強頑張ったんだね」

「死ぬほど頑張った」

「そこだけが心配だった」

「だな。でもさ、オレ1位通過なの」

「えー?!108位から?すっごーい!」

「ね」


「パブロ変わってないから、安心した」

「いや、変わったでしょ。頭良くなったし」

「見た目じゃ、わからないよ…」

「身長も!7センチ高くなったから!」

「そう?」

と言って、二人で立ってみた。

「ホントだ!」

「でしょ?」


「…絵理は…」

「ん?」

「…大人っぽくなってて、普通に…ドキっとする…」

そういうと照れた顔をした。

絵理も照れた。


パブロが絵理の頬に触れる。

(やばいっ!ドキドキする!)

と絵理が思ったとき、

パブロは両頬を引っ張った。

「痛っ」

パブロは笑った。

(いや、笑ってんなよ)

「好きだよ」

(不意打ち…。)

と思った瞬間、もう唇が触れていた。


「俺、一人暮らしすることにした」

「え?一緒に住めないの?」

「住まないほうがいいでしょ」

「?」

「ご飯だけ食べに来ていい?俺も作るし、食費も払う」

「うん…」

絵理がシュンとしてると、耳元で

「皆と暮らしてたら、イチャイチャできないじゃん…」

絵理は思わず顔が赤くなって、ニヤけてしまったが、見せないようにした。

パブロは、覗き込んて笑った。

(こういう時、やっぱりパブロは2コ上なんだって思う…)

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