第299庫 石の都ストーンヴァイス その3

「ゴザルは決まった?」

「……んっ」


 ゴザルがネックレスを指差す。

 今の僕とナコのやり取りを見て――てっきり、ゴザルも指輪を欲しがると思っていたので予想外の選択であった。

 少し自惚れすぎか、と反省する。

 ナコ同様、僕はゴザルにネックレスをつける。近距離、自然と目が合い――ゴザルが頬を赤らめながら微笑む。

 ゴザルは愛おしそうにネックレスに触れながら、


「ねえ、ソラ。ネックレスをプレゼントする意味――知ってる?」

「いや。なんだろう」

「ふっ、ナコちゃん甘かったわね。ネックレスには、独占といった想いも込められているのよ。私はこれで――ソラに縛られるの」


 全然自惚れじゃなかった上、想像を超える一言である。

 ゴザルが年甲斐もなく、ドヤ顔でナコに胸を張っているが――その言葉を聞き、ナコの瞳が不敵に輝く。

 ナコはフンっと鼻を鳴らし、奴隷輪を擦りながら、


「お侍さん、甘い返しですっ! 私の首もとを見てください。クーラに独占されている証があります。クーラと繋がっている証がありますっ!!」

「そ、それは卑怯すぎるわよっ!」

「首輪に指輪、今の私は無敵です」


 どの辺りが無敵なんだろう。

 あまりの勢いに――僕のツッコミは追い付かず。

 ゴザルは心底悔しいといった風に地団駄を踏みながら、


「うぅうっ、ズルいズルいズルい」

「ゴザル。大人なんだから――そんなに張り合わないでよ」

「年齢は関係ないわよ」「年齢は関係ないです」


 二人がハモる。

 そういう点は気が合うのか――ナコとゴザル、僕の両側から腕を組む。想いを伝えられてからは、二人の距離が異常に近い。

 以前のよう、曖昧に言ってくることがなくなった。

 世の男性が羨む状況ではあるが、僕の姿が女性という点は大きい。周囲から見たら仲の良い女子グループくらいの認識だろう。

 なので、僕も気にせず受け入れている部分はある。


「私もナコちゃんも、あなたに好きって伝えたんだから――遠慮しないわよ」

「ナコとゴザル、可愛くて綺麗な二人に寄り添われて――この世にいやと言う人なんていないよ」

「クーラ、嬉しいですか?」

「嬉しいよ」

「……天然たらし」


 ゴザルがボソッと呟く。


「それ、前にも聞いたけど――誤解だからね」

「誤解? 私とナコちゃんが引っ掛かってるじゃないの」

「えぇっ」


 なんとも、返答に困る内容なのであった。

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