第136庫 奇跡の再会

「ホムラ、話を聞いてくれっ!」

「だから、気安くホムラって呼ばないでって言ったよねっ!」


 魔法陣から火龍が顔を出す。

 ホムラは魔法職、精霊術師――精霊術師とは、文字通り様々な精霊を使役することができるジョブだ。

 だが、ホムラの場合攻撃に特化した精霊のみと契約しており、回復・防御等は皆無、破壊力に全振りした精霊術師となっていた。

 このギルドさぁ、脳筋しかいないよね。


「一応、弁明だけ聞いてあげる。時間内に答えて――2、1」

「普通3秒くれない?」

「ゼロ」


 火龍が僕目掛けて穿たれる。

 こんなものぶっ放したらホーム共々、僕含めて素敵な具合いに焼けてしまう。

 触手でどうにかできるか――いや、できるわけがない。

 ホムラの使役する火龍、これは精霊の中でも最強種に属する精霊だ。まず間違いなく触手は貫通、傀儡糸で壁をぶち破って逃げるが最善かもしれない。

 どうしたものか、と考えている間にも火龍が目前に迫り、


「あ、僕死んじゃう」

「闇斬っ!」


 直撃の寸前、火龍が消し飛ぶ。

 て、天井からナコが降ってきた。ナコはハッピーの切っ先をホムラに向け、黒い波動を全身にまといながら静かに言う。


「……クーラに、なにをするんですか?」

「ぁ、あなたのためなの! 奴隷輪を付けられて、色々なことを無理強いされているって知ったから」

「誰からそう聞いたのですか?」

「えっ? わ、私がそう思っただけで――でも、奴隷輪を付けられてるってことはそういうことだよね」

「全く違います。そもそも、勝手な判断で人を傷付けていいとでも?」

「で、でも」

「"Nightmares"のメンバーには、こんな礼儀知らずな方がいるのですか? クーラ、今すぐ帰りましょう。クーラの大切な仲間に文句は言いたくありませんが、あまりに失礼ではありませんか」


 ナコが怒り心頭といった顔付きでホムラを睨みながら、


「クーラに謝ってください」

「うぇっ」

「クーラに謝ってください、早く」

「うええぇえん! 謝るから、謝るからぁああっ! 怒らないで、怒らないで――円香まどかちゃぁあああんんっ!」


 ホムラが床にへたり込み、大声で泣き出した。


「どうして、この方は私の本名を知っているのですか?」

「ナコ、許してあげよう。家族を想う気持ちが暴走したんだ。話から察するに、ホムラはナコのお姉さんだよ」

「ごめんなさい、ごめんなさい」

「陽夏、お姉ちゃん?」


 ナコがホムラに駆け寄り、そっと仮面を外す。

 仮面の下から現れた面持ちに――僕は驚いた。ナコを少し大人びた顔付きにした美少女、姉妹という繋がりがすぐに見て取れたからだ。


「陽夏お姉ちゃんっ!」

「円香ちゃん、円香ちゃんっ!」


 ナコがホムラを抱き締め――ホムラがナコを抱き締め返す。


「……ねえ、なにが起こっているのにゃあ?」


 天井に開いた穴、ニャニャンがその場を覗き込み呆れ顔でそう呟いた。

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