第112庫 古代の武器
話が激しく脱線したが、お宝勝負の続きが始まる。
まず、言い出しっぺということで――ゴザル、キャロルさんのペアがアイテムを取り出していく。
「見なさい、このお宝の数々をっ! ウィンウィンに戻ったらしばらく働かなくても生きていけるレベル――ううん、しばらくどころじゃないわ。冒険者は引退、別荘でも建てて隠居生活できるレベルよ」
ズラリと並んだ綺羅びやかな金銀、宝石類。
目が眩むほどのまばゆい輝き、ゴザルが働かなくていいというのも頷ける。僕とナコは思わず「おぉ」と、光の勢いに圧倒されて簡単な言葉しかでてこなかった。
「ちなみに、キャロルさんが隠し扉を見つけてくれたの」
「隠し財宝の保管場所だったみたいなのです。自分のサーチに引っかかってくれたので運がよかったのです」
やはり宝探しのプロ、盗賊とのペアは強い。
だが、まだ負けたわけではない。僕とナコも価値がありそうなものはピックアップしてきた。
確かに、このお宝レベル――金銭的な意味合いでは勝てないだろう。
しかし、僕たちの判断基準は別にある。これを上回る性能、実践的価値、レアアイテムの括りでいえば勝負になるのだ。
ゴザルが勝利を確信した顔付きで僕を小突きながら、
「ふふーん。ソラ、降参するなら今のうちよ」
「甘いね、ゴザル」
「へぇ、まだ余裕がありそうな顔しているわね」
「キャロルさんがペアということで最初から不利なことは理解していた。ゴザルのことだから勝負を挑んでくるということもね。だから、僕たちもある方法でお宝をサーチさせてもらったよ」
僕の自信あり気な言葉にゴザルが目を見開く。
「そこまで読んだ上で秘策があったというの?!」
「僕たちが見つけたお宝はこれだよ」
籠手、刀、短剣を取り出して並べる。
ナコ以外、皆のメイン武器を手に入れて来たのだ。しかも、この武器は普通の武器じゃない。かなり最先端の技術が取り込まれている。
ゴザルが刀を手に隅々まで見ながら、
「……すごいものを持って来たわね」
「はわわ。自分の分までいいのですか?」
「もちろん。他の種類の武器もあるだけいただいてきたよ。槍、片手剣、両手剣、どこかのタイミングで役に立つかもしれないからね」
この大都市は地上よりも文明レベルが高い。
もしかしてと、装備類をメインに探索していたのだ。僕の予想はバッチリ、想像以上のレアアイテムが手に入った。
「まあ、探し当ててくれたのはニャンシロなんだけどね」
「まさか、ソラの言ってた秘策って」
「ニャンシロの嗅覚頼りだよ」
広い城内、闇雲に探していたらいくら時間があっても足りない。
武器庫には血の匂いが残っていたのか、ニャンシロはすぐに目的の場所を割り出してくれたのだ。
「ズルい、ニャンシロはズルいわよっ!」
ゴザルが異議を唱える。
「えぇっ、キャロルさんの方がどう考えてもズルいでしょ?!」
「そ、それを言われると反論できないわ」
「ニャンシロもナコの使い魔、ナコとペアである限りルール違反じゃない。この世界で生き抜くためにはどちらが必要不可欠なアイテムか。さてさて、ゴザルとの勝負はどっちの勝ちかな」
「うぐぐ」
古代文明の武器、お金では比べられない価値がある。
正直、総合的に言うならば――地上でも通ずる金銀、宝石類の方が強いだろう。僕とナコが手に入れたものはあくまで限定的、使用者が限られるものだからだ。
一気に勝負を決めよう、ゴザルは押しに弱い部分がある。ここは多少強気な話術で乗り切らせてもらう。
「クーラ、私たちの勝ちですか?」
「ゴザルが負けを認めたら勝ちだね」
「うぅ。この勝負は私たちの、私たちの負、まま、負」
余程負けを認めたくないのかゴザルが言い淀む。
僕たちの勝利まで秒読み――目前となった瞬間、ナコがきょとんと可愛らしく首を傾げながら、
「でも、宝石類もお金と同じくらいの価値がありますよね。生きていくという根本的な部分では欠かせないですよ」
「ナコちゃんの言う通りだわ」
ナコさぁんっ!
ナコの一言によりゴザルが冷静さを取り戻す。惜しくも勝敗を決する言葉を完全に引き出すことは叶わなかった。
予期せぬ助け舟により勝負は引き分けとなったが、僕はそんなナコの純粋で素直なところが大好きだったりする。
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