第57庫 Bランク様ファイト

 僕たちが現れたのを見て、サマロが驚いた表情で言う。


「……お前ら、どうしてここに」

「まず現状を把握したい。"Eisen"で動ける人は?」


 僕は端的に伝える。


「……ユースとモッズは不意を突かれて重症だ。回復薬で治る傷じゃない、戦線を離脱してもらうのがベストだろう」

「待てよ、サマロっ! 俺たちはまだ」


 僕はユースさんたちの言葉の続きを制する。


「僕とナコが君たちの代わりになる。ヒーラーさん――レイナさんだっけ、魔力は残っているかな?」

「え、ええ。ヒールは使えないけど、残りの魔力で''防壁''を張るくらいの余力はあるわ」


 防壁とは、その名の通り――身を守るバリアみたいなものだ。

 ユースさんとモッズさんは安全な場所に移動してもらい、レイナさんに防壁を張りながら二人を守ってもらうようにお願いする。

 僕はサマロの剣を拾い手渡しながら、


「サマロはもう一踏ん張りできるのかな?」

「……できるに決まってるだろ。なによりなんで俺だけ呼び捨てなんだ」

「今の時点で君にさん付けしたくない」

「ぐっ! このっ!」

「剣を振りかぶる相手はあっちだからね」

「わかってる。先に言わせてくれ、加勢に来てくれて助かった」


 サマロが剣を受け取り、ぶっきらぼうに言う。


「……クソ猫も、ありがとうよ」

「せめて黒猫と言ってください」

「……く、黒猫」

「行きますよ、サマロ」

「お前も呼び捨てかよ!」


 レイナさんたちが安全圏に移動したのを確認し僕は作戦を説明する。


「ハイスパイダーの足を半分切り落とす、素早い機動力を減少させにいこう」

「……おい、クーラだったか。半分ってそんな簡単にできるわけないだろ」

「サマロ、"怒号"は使えるかな?」


 怒号とは剣士の持つスキル。

 モンスターの注意を数秒間強制的に引き付ける効果があり、パーティー戦に置いては必須スキルといっても過言ではない代物である。


「そうだな。残りの魔力的にあと3回は使えるが、お前まさか俺にターゲット固定しろっていうのか?」

「3秒間隔で走りながら頼む。ナコ、その3回の間に足を1~2本、最低4本は斬ってほしい」

「了解です」

「……お前ら、本気でやるつもりか?」


 狼狽えるサマロ、ナコがジト目で見つめながら、


「ウィンウィンでは一番なんですよね、Bランク様」

「ぐぅっ! 普通このタイミングでその話持ち出すかよ?!」

「頼りにしています、Bランク様」


 ナコの一言がとどめとなり、退路が経たれたのか、


「あぁーっ、死んだら骨だけは拾ってくれよなっ!?」

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