第47庫 ニコイチ
「……嫌い」
「嫌いにならないでっ?! すぐ助けるからっ!」
僕は触手を展開し、ナコに絡み付くツタを引っ剥がす。
どちらもウネウネしているので、ビジュアル的になんともいえない光景である。引っ剥がしてはまた絡まり、引っ剥がしてはまた絡まる。
その攻防戦にナコがこらえきれなくなったのか、
「ふ、ふふ、あは。やだやだ、くすぐったい、くすぐったいです」
うーむ、悪戯してる感がすごい。
このままでは埒が明かないので、本体を倒す方向に作戦を切り替える。
僕は触手を糸状に変化させて内部に侵入、そのまま巨大化して破裂させる。
僕はこれを"
単純明快、侵入して破裂させることを一文字にしただけだ。
確かに、リーナの言う通りイメージを固定化しやすい。
解放されたナコが粉々になった球根もどきを見ながら、
「クーラのスキル、破壊力抜群ですよね」
「なにかあった時に連携しやすいよう、ナコには僕のイメージする技を伝えておくよ」
スキル、触手――ここからは以下の技を考えていた。
一、"
二、"
三、"
基本的にはこの3種があれば問題ない。
どれも初手から必殺になり得る技、以前の要塞型ゴーレムは例外として――生物、対人戦ならば糸状の触手は最強に等しいだろう。
あとは触手の射程圏内、僕を中心とした五メートル以内に放り込む。
弱点があるとすれば、多人数を相手にした時か――触手は一本しか展開できない。
戦闘スタイルを客観的に捉えるなら僕は一対一には異常に強く、ナコはどちらも平均的に対応できるオールラウンダーという感じだろう。
「ナコが派手に大技で表に立ってくれるぶん、僕は裏からの攻撃に専念できるから相性がよいかもしれないね」
「ふふ。私とクーラ、ニコイチですね」
ナコがリズミカルに両手でVサインをする。
そんな会話の最中、ひらりと一輪の花が僕たちの間に落ちてくる。これは球根もどき、モンスターの頭に生えていた花だ。
縛られているナコに目が行きすぎてよく見ていなかったけれど、
「これ、フラリシアだ」
「もしかして、クエスト達成ですか?」
「そうだね。一輪でよかったはずだよ」
うん、依頼書にもそう書かれている。
「クーラ。これは私のワガママなのですが、一輪だけでなく花束にして持って行くのは駄目ですか?」
「全然いいよ。なにかそうしたい理由でもあった?」
「私も昔ママのお誕生日にお花屋さんに行って、お花の値段を見て一輪しか買えなかった時があったんです」
フラリシアを手に、見つめながらナコが言う。
「気持ちが一番大事だとは思いますが、いっぱいプレゼントできたらもっと喜んでくれたのかなって想いもあって。なんだか、その日の自分を思い出しちゃいました」
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