第3庫 オフ会? 諦めません
「ステータス表示」
闇雲に呟いたわけではない。
このゲームをプレイしていたころ、ウインドウに表記されていた一覧を言葉にしてみたのだ。
それが運よくヒット、僕のステータスが可視化される。
《ネーム》 Kura
《ジョブ》
《種族》 人族
《保有スキル》 触手
「うわぁ」
僕は自身のステータスを見て思わず悲嘆の声が漏れる。
オンリー・テイルの世界は攻撃職、盾職、魔法職、生産職、ユニーク職、五つの特性に特化したジョブが存在している。
ユニーク職の一つ、触術師。
ユニーク職とはありえないほど癖が強く、とにかく扱いづらいジョブで有名だ。進んで使用するプレイヤーなどおらず、面白いほどパーティー向きではない。
攻略掲示板などでは「ネタジョブおつwww」「ユニーク職とパーティー組んだw宝くじ並にレアすぎるwww」「このキモいエフェクト誰得www」など草生えまくりのジョブであった。
オンラインゲームに置いてパーティーに向いていないというのは致命的、制作側も半分ネタとして実装していたようなものだ。
倉庫だからと適当に付けた名前、適当に決めてしまったジョブ。あぁ、過去の自分を呪いたい。キャラの外見以外もよく考えておこうよ、僕。
「スキル発動――触手」
にょどろん。
僕の手の平から黒い触手が一本飛び出た。率直に言うと激しくキモい――しかも、想像以上に大きく丸太くらいの太さがある。
にょろん、にょどろろん。
操れる触手の本数は一本、触手は手だけからという限定的な制限もなく――空間から飛び出ているといった風で自身の周囲にも自由に展開が可能であった。
展開範囲は僕を中心に十数センチくらいだろう。
正直、場所問わず展開できるという点は非常に大きい。加えて、出し入れのオンオフも瞬時にできて太さや長さも変え放題――五メートルくらいは伸び縮みできる。
にょどろん、にょろろ、にょろろろろん。
しばらく操作性を確かめていたのだが、そんな僕を見て周囲が騒ぎ始めたので触手を引っ込める。
なんだろう、腫れ物を見るような――ドン引きした視線を感じる。
「アイテムボックス」
次いで、ステータスに同じくアイテム欄が可視化される。
僕はメインキャラにてゲットしたレアアイテム・レア装備等は、基本的には大部分を倉庫にて保管していた。
だからこそ、こちらについては倉庫だからこその利点があった。
レアアイテム・レア装備が大量にあるのはもちろんのこと、お金――この世界では『エドル』というのだが、これもかなり豊富に貯蓄されている。
ひとまず、アイテムや金銭的な面で頭を悩ませるという必要はなさそうだ。
「プレイヤーサーチ」
さて、ここからが本番だ。
フレンドリストは残念ながら意味がない。メインキャラとは違い、倉庫キャラまでは登録し合っていないからだ。
……可能性は十分にある。
僕がここにいる。だとしたら、皆がいても不思議じゃない。むしろ、皆以外のプレイヤーがいてもおかしくはない。
僕と同じ状況になっていたとしたら――、
「サーチ名、Ramyua、Homura、Gozaru、Nyanyan」
――い、た。
いた、いた、いた! あまりの嬉しさに思わず泣きそうになる。ウィンドウに見慣れた名前が表示されたのだ。
ラミュア、ホムラは白色――ゴザル、ニャニャンは灰色になっていた。
灰色ということはゲームでいうところのオフライン状態、意味するところゴザルとニャニャンはこの世界にいないということだろう。
だけど、二人いる。
表示されているエリアは王都『エレメント』、オンリー・テイルに置いて活気溢れる一番の大都市、たくさんのプレイヤーが集まる場所だ。
この瞬間、僕の目的は決まった。
「諦めてたまるかぁっ! 皆に会いに行こう、オフ会のリベンジだ!!」
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