第39話 竿師 1x

#1 

「以上で説明終わりです。此れが契約書原本です」

「……」

「説明したとおりです。御捺印願います。」



#2 

何時ものファストフード。

時刻は午後七時過ぎ。

何人かの男女が群れて携帯を見て嬌声を上げている。他にも数人の男性が各々携帯の動画を見ている。

”何これ”

”実況中継”

”沈むんじゃない此の人”

”さあね”

どうやら強姦の実況中継を動画サイトで流してるらしい。

気に成ってサイトを検索してみるが、どれがそれだか判らない。

偽装しているのだろう。

暗号解読能力があるか、知っているか、何方かでなければ辿り着けない様になっているらしい。大体は後者なのだろう。内通者に成って教えてもらう。その方が早い。

”かわいそう”

女子の一人はそう言って友達と階段を下りた。



#3

「URLは?」

「動画サイトのチャンネルの一つで特定しました」

「動画サイトにチャンネルの登録情報開示請求。」

「個人情報を盾に拒絶」

「個人情報保護法七十八条に基づいて開示請求」

「同じ回答です」

「公務執行妨害を適用」

「チャンネル登録者特定。」



#4

電話が鳴っている。

十五人目。何だか意識が時々途切れる。首を絞められてる気がする。

”合意ですよ。”

”契約書?私的に撮ってますから”

”え?非合法?”

”―—警察来るって”



#5

客が纏めて帰っていく。

”何?”

”放送中止だってさ”

”ガサ入れだそうだ”



#6

屋敷の前に巡視車両が四台停車していた。

「警察です。入りますよ」

「令状あるんだろうなぁ」

「地裁の捜査令状です」

「何も起きてないよ」

「行為の記録です」

「……」

「不同意性交ですね」

「合意だ」

「くどい様ですが、記録があります」

「合意だよ。演出は趣味だし。な」

「……」

「不同意ですか」

「合意です」

「写真撮ってもいいですか」

「困るよ」

「何故」

「肖像権。」

「根拠法は?」

「名誉棄損」

「公然と事実を摘示し?」

「……」

「脅迫しましたね」

「してないよ」

「行為の記録にない痣が」

「行為中の」

「何の行為ですか?」

「だから―—性行為」

「合意の?」

「勿論」

「任意同行願えますか?」

「拒否するよ」

「向こうの女性に」



#7

「続ける?」

「辞めとこう。張ってるかもしれない」

「現行はな……」



#8

「契約しちゃった」

「辞めときなよ」

「大丈夫。人前でするのも、撮られるのも慣れた」

「「労働基準法第五条」と「性をめぐる個人の尊厳が重んぜられる——」、ってっ法律の第十三条で解除してもらいなよ」

「よく分んない」

「……メールで会社に出演契約を任意解除しますって送って置くこと」

「借金返せない」

「それはそれで別に何とかする事」

「賠償金は?」

「性をめぐる、第十三条三項により請求されないから心配しない」

「詳しいね」

「知り合いが居て法律に詳しいのよ」


電話の向こうで、彼女が笑った気がした。

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